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| HRD JAPAN 2010 プレゼンテーションセミナー:2010年2月4日(木) 開催レポート |
PART1「グローバル戦略・経営・組織とリーダーシップ」 早稲田大学大学院准教授 池上 重輔氏
■「うまく頑張る」ことの限界
日本市場で独自の進化を遂げてきた技術やサービスが、世界の標準からするとオーバースペック過ぎて国際競争に勝てない状況に対して、「ガラパゴス化」という言葉が数年前からいわれてきました。しかし、本当に日本の競争力は落ちているのでしょうか。売上規模で世界トップ100に入る企業を国別に統計してみると、トップ100にランクインした日本企業の数は確かに2000年代に入ってからは減少しているものの、「失われた10年」といわれた90年代には、70年代から80年代に比べ増えていたことが分かります。このことが示す意味はなんでしょうか。
これまでは日本企業は、「うまく頑張ること」(オペレーション・エクセレンス)によって「品質100点のものを少しでも安く売る」努力をしてきました。これに対し、アメリカ企業は「品質は70〜80点でいいかわりにルールを変えて勝負しよう」、ヨーロッパ企業はそこに「プレミアを付けて売ろう」という戦略の違いが出てきました。ここへ、「品質は50点未満でいいけど、その代わりにコストは10にできるよ」という新興国が競争に加わり、日本がオペレーション・エクセレンスによって競争に堪えうる限界を超えてしまった。これが今の状況の背景にあると思います。
これからの時代、勝負する場所はアジアをはじめとする新興国になってくるでしょう。新興国のユーザーはまだ50点未満の新興国商品に満足していないかもしれません。多くの日本企業は自国を含む先進国市場における戦略と、新興国市場における戦略を分断して考えています。問題は、新興国企業による破壊的なイノベーションが、もしも近い将来先進国のユーザーも満足させることができるようになったとき、日本企業はそのとき勝てるのか、そして新興国市場がメインマーケットになり、金額的にも先進国に匹敵もしくは超えたときに、日本企業はそこで勝てるのか、ということです。海外の最も進んだ企業は先進国市場と新興国市場を大きな枠組みでいかに統合するかに真剣に取り組み始めています。
■グローバル競争に必要なイノベーションと組織
日本の携帯電話を例にあげると、一時期ものすごくオーバースペックになり過ぎて日本製品は浮いているといわれていましたが、ここへきて中国などでは「日本のこのサービスっていいかもしれない」と見直しが始まっています。このことは、顧客のニーズを前提にした技術の進化であればいつかはヒットすることがあるかもしれない、そして同時に、「こういう視点でものを選んではいかがでしょう」「こうすればハッピーになりますよ」といった話をもっとアピールできるようになることが非常に大切である、というメッセージを含んでいるのではないでしょうか。
そういった考えで新興国のニーズを取りいく場合、進出先の知見やイノベーションを本国においても主体的に活用する、そして付加価値を上げながら(頑張りだけにたよらず)コストを下げる、といったこれまでとは違う種類のイノベーションが必要になってきます。こうしたイノベーションを実行しようとすると、当然これまでの組織デザインや人材育成についても大きな変革を迫られます。しかし問題は、ステップバイステップで変革を進めるとしても、国内・海外ともに戦略が不明瞭であるために人事・人材開発部門が人材準備・育成しづらい状況にある企業が多い、ということです。
*シンガポールのビジネス情報「AsiaX Biz(2010年5月5日掲載)」にて池上氏のスペシャルインタビュー掲載。
|特集|日本企業の「グローバル戦略」とリーダーに求められるもの >>>
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PART2「これからの海外組織と人材育成」 弊社代表取締役CEO 西田 忠康 |
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■ローカル人材による「経営の現地化」
仕事柄、シンガポールや上海で日本企業の現地トップの方とお話をさせていただく機会が多いのですが、今多くの方が「中央集権的で、大きな日本市場を前提としたアジア戦略・中国戦略では、現地の市場の動きについていけないだろう」とおっしゃっています。これまで日本企業は、自国の大きな市場を前提に、そこで売れるものを世界でも売っていく、そしてそれを効率的に行える組織を世界中に作ってきました。しかし、リーマンショック以降、新興国のV字回復を早急に取り込むことは多くの企業にとって緊急の課題であり、日本人をトップマネジメントとする体制を維持するのではなく、ローカルの優秀な人材をトップに登用する「経営の現地化」を大きく加速せざるを得ないのではないかと思います。
ローカル人材が現地のトップマネジメントに就くことで、「本社の意思」や「グローバルな全体最適」とのコンフリクトが生じるおそれは確かにあります。そうならないために、いわばトップの参謀として戦略策定や部門間のリソース配分などに関与し、本社との調整機能を担えるような優秀な日本人の方を「ナンバー2」のポジションにつける必要が生じることになるだろうと思います。そうした人材にはMBAホルダーの多いローカルのトップマネジメントと渡り合えるだけのマネジメントスキルが必須であり、その地域特性に応じた高度な問題解決力を習得する必要があります。こうした動きは各部門レベルでも起こることになるでしょう。
■「グローバル・タスクリーダー」の育成
経営の現地化による「ローカル適応」を進める一方、企業としてのビジョンや理念の浸透、これまで培ってきたノウハウや技術の移転、あるいは全社的な施策や新事業のグローバル展開を担う機能を強化しなければなりません。そのためには各国に飛んで行って現地の社員とともにプロジェクトを進められる人材が必須であり、そういった「グローバル・タスクリーダー」とも呼べる人材を育てることこそが本社の重要な役割となるだろうと考えております。これまでは国際業務や海外赴任に伴って必要となる語学や異文化マネジメントをベースに、人材マネジメントやリーダーシップを学ぶ研修を多く実施してきました。一方、各国に出向いて企業の価値創造に取り組む「グローバル・タスクリーダー」は、個別の専門領域の知識だけでなく、ファシリテーションや合意形成、プロジェクト管理などのスキルを高める必要があり、今後のグローバル人材育成における新しいテーマとなっていくと思われます。
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