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アキバ在住アナリストのブログvol.13          台湾ハイテク事情(下)〜李登輝元総統に知られざるハイテク政策を聞く(1/22更新)

アキバ在住アナリスト、CICOM(サイコム)取締役の石原昇です。

組織を動かすトップにはリーダーシップが不可欠です。大企業、ましてや一国のリーダーともなれば、大局的見地が求められます。今回の台湾訪問では、李登輝元総統に直接お話を伺う機会を得ました。農業経済学者である李登輝氏が、どうやって台湾をハイテク王国へと転換させてきたのか、かねてから私が抱いていた疑問に明快にお答えいただきました。

李登輝元総統のオーラに圧倒されました
李登輝元総統のオーラに圧倒されました

まず李登輝氏の専門領域を振り返ってみましょう。第2次世界大戦中に京都帝国大学農学部に進学し、学徒出陣を経て、戦後に台湾大学農経学科を卒業しています。さらに米国アイオワ州立大学で農業経済学の修士号を取得して、帰国後には台湾農林庁技師に就任、その傍ら、台湾大学で教鞭をとっています。68年には、再び米国に留学し、コーネル大学で農業経済学の博士号を授与されています。博士論文である「Intersectional Capital Flows in the Economic Development of Taiwan,1895-1960」は米国農学会の最優秀賞を受賞しました。そうです。まさしく農業経済学を究めた学者なのです。

その李登輝氏が私に語ったのは、「現地資本主義」という概念でした。その土地に最も適したものを投入し、収穫を得て再生産していく。農業では作付けの品種を高度化し、生産性を高めることであり、経済政策からみると、「資源配分」と「産業構造の転換」の2つが重要になります。実際、78年からの台北市長時代には、土壌が衰えて困窮していた南郊の村に、土地使用を積極的に認可して、鉄観音茶の名産地に育てています。総統時代の99年9月に台湾全土を襲った大地震の際には、いち早く新竹のハイテク企業に電力を優先的に供給するように陣頭指揮しました。復旧で限られた電力を最も効果的に資源配分する発想がそこにあったと思われます。日本でこのようなことをすれば、企業優先との大批判を浴びることでしょう。

また産業構造の転換は、経済の発展過程のなかで、第一次産業から第二次産業、そして第三次産業へと重心が移っていきますが、台湾ならではの施策が講じられています。日本からの輸入で最大の赤字品目であったCRT(ブラウン管)に対し、台湾国内の重点投資を奨励し、日本に対しては直接投資と技術移転をアピールして、産業構造を転換させて、遂には世界一の輸出国になりました。その後の中国の追い上げに対しては、LCDへのシフトを誘導しました。80年代に米国が不景気になった際には、多くの留学生が台湾に戻り、ハイテク産業の素地を牽引し、90年代はさらに加速してベンチャー企業が成長しました。李登輝氏の91年8月の「不確定の時代から実務の時代へ」と題する講演では、国家発展の6つの方向性が示され、そのなかで製造業の更新を図り、科学技術にも力を注ぐ旨が表明されています。

日本では、今年度から5年間を見据えて第3期科学技術基本計画がスタートしました。厳しい予算の中で、政府研究開発投資が1兆円増額の25兆円となり、個別企業でも研究開発や設備投資は積み増し方向にあります。しかしながら、各種施策は自治体で乱立し、企業は独自のビジネスモデルに欠けています。昨年初めに浮上した日の丸共同ファブ構想では、企画会社の「先端プロセス半導体ファンドリ企画」が各社の足並みが揃わず、6月に事業化を断念しました。世界と戦うには、産業構造の転換を見据え、スピードをもって、資源配分を有効に決定していかなければ生き残れないのです。大局的見地を持った真のリーダーが必要です。


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