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アキバ在住アナリストのブログvol.54               日本を取り込むアジアンパワー(上)〜韓国編 (12年7/26更新)

先月、3週間にわたり、韓国と中国へ出張してきました。飛行機、フェリー、公共バスなどを乗り継いで、延べ18都市を訪問し、産業や企業の集積、ハイテク事情などを視察しました。開催中のヨス万博や3回目となるソウルの外国人投資家会議、中国山東省の知られざる地級都市の発展状況など、2回にわたってご紹介しましょう。

麗水(ヨス)EXPO駅で出迎える、「ヨニ」と「スニ」
麗水(ヨス)EXPO駅で出迎える、「ヨニ」と「スニ」

視察の前半は韓国。まずは成田から釜山(プサン)に飛び、メディカルストリートを訪れました。釜山の副都心、西面(ソミョン)には、170もの専門医療機関が集積し、活気を見せています。治療範囲は、美容整形から視力矯正、微細外科手術まで多様です。医療技術は世界最高レベル、コストは米国の医療機関と比べて3分の1から10分の1。日本からの患者さんも多く、韓国観光公社の強力な支援のもと、メディカルツーリズム(医療観光)が盛んです。100億ドルといわれる市場に、インドやシンガポールなどと伍して、国家戦略として展開する意気込みを感じます。

高層ビル3棟に専門医療機関
高層ビル3棟に専門医療機関がビッシリ

釜山の江西区では、日本企業の専用団地として66万平方メートルの造成が進んでいます。今年の下半期に着工し、2014年に竣工する計画です。進出した日本企業には、用地取得費や賃貸料の補助、さらに税金の減免や韓国人労働者の賃金の一部負担など手厚い支援が用意されています。釜山港でも、日本からの貨物専用の第2コンテナターミナルが建設されています。

釜山からは、朝鮮半島の南の海岸線に沿って、巨済(コジェ)、統営(トンヨン)、普州(チンジュ)、順天(スンチョン)、麗水(ヨス)へと移動しました。この一帯は、文禄・慶長の役で、亀甲船の水軍を率いて、秀吉軍を破った祖国の英雄・李舜臣ゆかりの史跡が残っています。3大激戦地となった普州城、戦勝記念として建てられた統営の洗兵館、水軍の本拠地となった麗水の鎮南館などです。

麗水の李舜臣広場の奥にある木造建築最大級の鎮南館
麗水の李舜臣広場の奥にある木造建築最大級の鎮南館

麗水では、8月12日まで、国際博覧会(EXPO 2012 YEOSU)が開催中です。テーマは、「生きている海と沿岸 :資源の多様性と持続可能な活動」です。2005年の愛知万博や2010年の上海万博のような大規模で総合的な登録博覧会ではなく、かつての沖縄海洋博、つくば科学博などに相当する認定博覧会です。1日がかりで主要展示館のほとんどを見て回りました。一番人気のアクアリウムは、韓国最大規模の水族館とのことでしたが、沖縄の美ら海水族館や横浜の八景島シーパラダイスを超えるものではありませんでした。

特設企業館は、SKテレコム館はケータイ端末の一般的なゾーン展示、サムスン館はダンサーが躍るファンタジーショーが中心。LG館も2050年に使用される未来製品の体験と謳いながらも3D映像や現在の技術応用製品ばかり。大宇造船海洋ロボット館は、サッカーをする小型ロボットや水槽を泳ぐ魚ロボットなど、テクノロジーとして新規に見るべきものはありませんでした。

ただ夜になって、The Big-Oと呼ばれる巨大リングにレーザー動画が映し出される海上ショーは華やかでした。またメイン街路のアーケードを、空に浮かぶ海に見立てたエキスポ・デジタル・ギャラリーも見応えがありました。新技術の披露の場というよりも、海洋テーマを楽しむエンタテイメントの場のようでした。博覧会の開催を前に、大架橋や鉄道などのインフラが整備されており、会場近くにある東洋最大の麗水国家産業団地を発展させる狙いがあると思いました。

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天井の超大型LEDスクリーンが迫力のエキスポ・デジタル・ギャラリー

麗水からは、韓国が誇る高速鉄道KTXに乗って3時間余。ソウル市内の龍山(ヨンサン)に到着しました。ここは韓国の秋葉原と呼ばれ、電気街として有名なところです。アキバ在住アナリストとしては、毎回必ず行くところです。昨年まで駅前にあった雑居ビルや風俗街は、すっかり取り壊され、瓦礫の山となっていました。

ここでは韓国最大級の都市再開発が進められています。駅裏の広大な鉄道車両基地とともに、国際業務地区として生まれ変わります。一時、反対運動の激化とリーマンショックで建設は中断していましたが、昨年10月に起工式が行われました。当初計画にあった東京スカイツリーを超えるドリームタワーは見直された模様ですが、100階を超えるランドマークビルを核に、商業施設やホテル、オフィス、マンションなど67棟のビルに、30兆ウォン以上が投じられる予定です。2016年末には、新都市が出現する見込みです。

龍山駅から電子城に至る歩行デッキの下は広大な空き地
龍山駅から電子城に至る歩行デッキの下は広大な空き地

ソウルでは、3日間にわたり、韓国の知識経済部(日本の経済産業省に相当)とKOTRA(日本のJETROに相当)が主催する会議「Foreign Investment Week (FIW)2012」に参加しました。全体会合のほか、環境・エネルギー、ICT、コンテンツの産業分科会、また経済自由区域、FTA、プライベート・エクイティ/ベンチャーキャピタルなどのカンファレンスが連日開催され、積極的な議論が交わされました。

龍山駅から電子城に至る歩行デッキの下は広大な空き地
初日に開催されたFIWのネットワーキング・パーティー

韓国に進出している日本企業は現在8000社を超えており、東日本大震災を契機に、改めて韓国への立地が注目されています。昨年は416社、今年は5月末までに220社が進出しています。FIWには、第1回から継続して参加していますが、第3回となる今年は、多くの日本人を目にしました。初めて日本人投資家をターゲットとした「韓国部品素材投資環境セミナー」も開催されました。プレゼンターとして登壇したInvest Korea団長の韓基元氏は、流暢な日本語で熱弁を奮いました。

「韓国は、日本と距離が近く、世界一のサービスを誇る仁川空港や取扱量世界5位の釜山港があります。全土で交通インフラが整備されています。産業の集積も進み、現地調達比率は74.5%に達しています。世界でFTAを一番締結している韓国に立地することで45か国の関税減免を享受できることができます。24.2%の法人税率や3.7円/kwhの電気料金などコストが安く、優秀で離職率が低い人材が豊富です。サムスンやLG、現代などのグローバル巨大企業の存在も魅力です。韓国は日本企業専用の部品素材専用団地を用意しています。」

日本企業とのグローバルパートナーシップを強調
日本企業とのグローバルパートナーシップを強調

韓国政府は現在、「部品素材未来ビジョン2020」を推進しており、2020年までに部品と素材分野で世界4大強国になる目標を立てています。同分野で対日赤字が10年間で倍増していることに加え、東日本大震災で日本からの部品素材のサプライチェーンが滞ったことが後押ししているようです。

セミナーの翌日には、韓国南部の亀尾(グミ)を視察しました。ここは韓国で最大規模の内陸型産業団地があり、サムスン電子やLG電子などハイテク企業を中心に1409社が一大クラスターを形成しています。日本企業は24社が進出しており、第4国家産業団地に、東レ、旭硝子などの最新工場が立地しています。このなかに部品素材専用団地として25.5万平方メートルが確保されています。

亀尾工団展望台から望む広大な国家産業団地
亀尾工団展望台から望む広大な国家産業団地

さらに今年4月には、940万平方メートル規模の第5団地の造成が始まりました。ここには東レが炭素繊維の最新工場の建設を表明しています。驚くことに、50年間は賃貸料がタダ、法人税も5年間全額免除(その後2年間は50%減免)など、立地支援は、日本の自治体とは比べ物になりません。日本企業の海外立地は時代の趨勢ですが、長期的にみて日本の優位産業の空洞化や技術流出リスクが心配になります。

韓国の最後は、仁川(インチョン)の港へ行きました。中国の山東省の青島(チンタオ)に渡るためです。両都市間は航空便も頻繁に飛んでいますが、今回は敢えて、夜の7時に仁川港を出港し、翌朝の10時過ぎに青島港に着くフェリーに乗りました。料金はエコノミークラスで11万6000ウォン(約8100円)と格安なため、気軽な交通手段になっています。海を隔てた韓国と中国のパイプが太いことを改めて実感しました。

韓国-中国の沿岸都市の往来は予想以上に密接
韓国-中国の沿岸都市の往来は予想以上に密接


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