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アキバ在住アナリストのブログvol.55               日本を取り込むアジアンパワー(下)〜中国編 (12年8/8 更新)

アキバ在住アナリストの石原昇です。

秋葉原の電気街で売られている数多くの家電製品。昨今、Made in Chinaはもちろん、日本製であっても中国メーカーのものが増えてきました。ビールで有名な青島(チンタオ)には、冷蔵庫や洗濯機など白物家電で世界トップのハイアール(海爾)の本社があります。

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青島のシンボル、桟橋の向こうに広がる旧市街

創立が1984年のハイアールは、昨年の売上高が2兆円を超えています。青島の本社を初めて視察した90年代の初頭、巨大な工場群に圧倒され、マネジメントから聞いた多角化と世界戦略に脅威を覚えた記憶があります。日本市場へは10年前に参入して以来、苦戦していましたが、昨年、三洋電機から家電事業を買収してAQUAブランドを手に入れました。日本での売上高は、昨年度は108億円ながら、今後は、自社のHaierブランドと知名度が高いAQUAブランドの2枚看板で、2015年度に800億円を目指しています。

青島には、もう1つの家電の巨人、ハイセンス(海信)も本社を構えています。激戦の薄型テレビ市場で中国トップシェアを誇り、日本へは昨年3月に本格参入しました。この7月には、50インチテレビで日本製の半額近い10万円以下の格安モデルを発売して話題を呼びました。他の家電製品も拡充し、この春の冷蔵庫に続き、来年はエアコンや洗濯機も販売する計画です。経営悪化に苦しむパナソニックやシャープなど日本メーカーの踏ん張りを祈らずにはいられません。

中国山東省の視察の旅は、青島から長距離公共バスに乗り、西へ向かいました。下車したのは、世界的に有名な凧揚げの町、濰坊(ウェイファン)です。毎年、国際凧揚げ大会が開催されています。市の中心部にある凧博物館を見学し、さらに西の淄博(ズーボー)に移動し、3000年前の春秋戦国時代に繁栄した斉国の中国古車博物館と歴史博物館を足早に廻りました。1990年に高速道路の建設中に偶然発見された馬車の遺跡は、中国考古遺跡の10大発見に数えられる壮観な眺めでした。

当時の馬車の化石が完全な形で残っている古車博物館
当時の馬車の化石が完全な形で残っている古車博物館


また斉國歴史博物館では、トリビアものの展示に釘付けになりました。ロンドンオリンピックでも注目のサッカーは、一般には英国生まれとされていますが、実はここが発祥だったのです。1994年に、FIFAがサッカーの起源を古代中国の「蹴鞠」と正式に認定しました。

古代中国のサッカーボールとFIFAの認定書を展示
古代中国のサッカーボールとFIFAの認定書を展示


淄博(ズーボー)は、古来より交通の要衝であり、陶磁器の都、絹織物の里として名を馳せてきました。近代になって、セラミックスや石油化学などの有数の工業都市として発展しています。昨年、日経とアクセンチュアが共同で調査した「伸びゆく世界都市ベスト100」(日経ビジネス2011年10月24日号)では、世界16位にランクされました。ちなみに、1〜3位は、デリー、ムンバイ、ダッカ。16位の前後は、15位がバンガロール、17位が天津でした。馴染みの薄い中国の地級都市が上位にランキングされていたので、奇異に思っていましたが、今回初めて訪問して納得しました。中国に54ある国家ハイテク産業区の1つ、湽博国家高新技術産業開発区には、バイオ医薬、新材料、電子工業等の産業が集積し、外資系企業が500社以上も進出していました。

拡張が進む湽博国際展示場の前に巨大なバスターミナルが出現
拡張が進む湽博国際展示場の前に巨大なバスターミナルが出現


さらに西へ向かい、山東省の省都の済南(ジーナン)に着きました。ここで日本国際貿易促進協会の訪中団に合流しました。山東省では、「山東半島藍色経済区発展計画」や「黄河デルタ高効率生態経済区発展計画」を推進し、西部地区の開発も積極的に行っています。今回、山東省人民政府のアテンドにより、西部の重点産業団地を視察し、市長をはじめとした行政トップや開発区の責任者と懇談することができました。日本から山東省への投資額は73.2億ドル、日本企業が1800社進出しており、今後も日本への期待が大きいと才利民副省長から説明を受けました。

済南の山東大廈で開催された人民政府要人との晩餐会
済南の山東大廈で開催された人民政府要人との晩餐会


翌日は、徳州(ドーヂョウ)へ移動し、中国の太陽熱温水器の大手メーカー、皇明太陽能集団を訪問しました。現地の太陽熱温水器の価格は3万5,000円程度、政府補助により、実質負担は1万4,000円程度になるため、お湯の供給が不便だった農村部を中心に、急速に普及しています。近年は、太陽電池にも力を入れ、ソーラーバレー構想の実証実験を進めています。創業者の黄鳴(ホァン・ミン)社長は、石油の探査技術研究所の出身で、石油が枯渇する事態を憂慮して、1996年に事業を立ち上げたというエピソードに共感しました。今後は世界展開を加速し、ブラジルでは、5年間に太陽エネルギーを使った暖房機やエアコン、ランプなどの太陽関連機器を販売する小売りチェーンを5000店も展開する計画です。

エネルギー消費の90%を太陽で賄う徳州のソーラーバレー
エネルギー消費の90%を太陽で賄う徳州のソーラーバレー


次に訪問したのは聊城(リャオチェン)です。東昌湖の畔に、雄大な木造の光岳楼がたたずむ風光明媚な都市です。経済開発区は、394万k㎡を計画し、既に40万k㎡が整備されています。さらに16億元を投じて地の利を最大限に活かした国際物流園を建設中でした。訪問した企業は、LEDを生産するLYルミナス、窒素化学肥料で中国最大手の魯西化工集団をはじめ、ディーゼル部品のメーカー、銅精錬とリサイクルの環境企業など多彩でした。移動途中に東阿県(ドンオーシエン)に立ち寄り、県長の表敬を受けて、曹植の墓を参拝しました。

人海戦術でLED素子を組立てるLYルミナスの生産ライン
人海戦術でLED素子を組立てるLYルミナスの生産ライン


次の訪問地は、菏沢(ホーズー)です。かつては曹州と呼ばれていた牡丹の郷として有名なところです。田舎町のイメージがあったのですが、孫愛軍市長から山東省で最も人口が多い968万人がいると聞いてビックリしました。山東省の最西部に位置し、4つの省と接する要衝の地であり、石油、石炭、天然ガスなど天然資源にも恵まれた大都市です。中心部の国貿中心の開発現場を始め、菜種油を製造するCOFCO、肥料メーカーの金正大国際、化学メーカーの金盛熱力などを視察しました。

ベンゼンやブタジエンを精製する金盛熱力のプラント
ベンゼンやブタジエンを精製する金盛熱力のプラント


最後の訪問地の済寧(ジーニン)は、孔子や孟子を輩出した文化都市であり、交通の要地です。隋の時代に築いた大運河が市内中心を通り、明や清の時代には山東省で最も経済が発展した都市となり、その繁栄は蘇州を模して「江北小蘇州」とも呼ばれていたそうです。石炭採掘量が多く全国八大石炭基地の一角を占め、石炭を利用した大型火力発電所が存在し、重工業が集積しています。ここでは、日本のコマツの建機工場や台湾のUMCのLED子会社の工場、ショッピング客で賑わうジャスコの店舗を見学しました。

江蘇省常州とともに中国の生産拠点を担うコマツの済寧工場
江蘇省常州とともに中国の生産拠点を担うコマツの済寧工場


またレナウンを買収して一躍有名になった山東如意科技集団も訪れました。同社は、1972年に国営毛紡績工場として設立され、2001年に民営化された繊維メーカーの大手です。独自開発した人の毛の半分の細さの極細ウール糸「如意紡」が2010年1月に国家科学技術進歩一等賞を受賞したと、広報官が技術力を誇らしげに説明してくれました。従来、イタリアのアルマーニやドイツのヒューゴボスなどからの委託生産をしていましたが、自社ブランドを強化し、東洋のファッションリーダーを目指して、2010年7月に業績不振に陥っていたレナウンに経営参画しました。その後、伊藤忠商事から出資を受け、日本企業との連携が強まっています。

山東如意科技集団の広大な縫製ラインは圧巻
山東如意科技集団の広大な縫製ラインは圧巻


夏場を迎え、アジアの景気減速が鮮明になっています。中国の4〜6月期の実質GDP成長率は、6四半期連続して鈍化し、リーマンショック以来3年ぶりの8%割れとなりました。最大の輸出先である欧州の債務危機の影響が出ています。韓国も同様で、先月に韓国銀行が今年の実質GDP成長率の予測を4月時点の3.5%から3.0%に下方修正しました。こうしたなかで、両国とも日本を取り込み、成長基盤を固める政策を強力に進めています。今秋にも交代する両国首脳の舵取りが注目されています。


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