コラム

2020.02.10

バーチャルクラスルームを実践して分かった3つのこと

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小西 功二 Koji Konishi
小西 功二 サイコム・ブレインズ株式会社
ディレクター / シニアコンサルタント

リアルな集合研修と遜色のない結果に……成功のカギは?

入念な事前の準備と打ち合わせを経て行われた今回のVCRですが、結論からいうと、全5回とも成功裏の内に終えることができました。後に寄せられた受講者の感想としては、

  • フェイス・トゥ・フェイスの研修と比べても遜色ない
  • ロールプレイトレーニングがオンラインで実施できたことは画期的
  • 仮想の小グループに分かれての議論が盛り上がった
  • 画面上にお互いの顔が見えているので、かえって緊張感・集中力を持続できた

…といったポジティブなコメントが多く、8割以上の受講者から「トレーニングゴールを達成できた」と評価をいただくことができました。では、今回の成功のカギはなんだったのでしょうか?大きくわけて3つにまとめてみたいと思います。

● 成功のカギ1:欲張らないゴール設定

VCR成功のカギ。一つ目は、トレーニングのゴールを欲張らなかったことです。VCRでは、各受講者がPCやタブレット、あるいは小さなスマホの画面を見ながら受講するので、持続可能な集中力の限界を考慮すると1回あたりの時間は3時間程度が適当と判断しました。限られた時間内で達成可能なゴールを、その他のVCR上の制約条件も考慮して「最低限ここまでは」というレベルで設定したことがよかったと思います。併せて、ゴールを達成するためのプログラムをシンプルにデザインしました。これによって各回の学習のゴールを達成するだけでなく、オンラインでの進行をスムーズにし通信環境によるトラブルを回避することにもつながりました。

● 成功のカギ2:オペレーター、サブファシリテーターなど、VCRに最適化した運営体制

成功のカギの二つ目は、リアルな集合研修よりも運営スタッフを補強したことです。具体的には、講師兼メインファシリテーターのほかに、サブファシリテーター、オペレーターの3名体制で運営しました。オペレーターは、映像・音声の不具合の解決、通信トラブルの解決、仮想的にグループを分けたり、討議やロールプレイの残り時間を画面上でお伝えしたり、全体のタイムマネジメントをしたりといった役割を担いました。これらは集合研修では通常、設定しない役割であり、講師・ファシリテーターが、研修の中身そのものの伝達やクラスの取り回しに集中するための工夫です。また今回は4つの小グループに分けたため、どうしても講師の目が行き届かないところが出てきます。そこで顧客企業の社内のトレーナーの方に、テーブルトレーナーになっていただき、小グループによるディスカッションの際のファシリテーションをお願いしました。

その他にも今回は、「グループ編成については、事前に回収した課題をもとに課題意識が近しい受講者を組み合わせる」あるいは「グループ討議の際には必ず書記役を設置する」「討議結果をあらかじめ決めたフォーマットに入力し、クラス全体で共有する時に入力した画面を画面共有してもう」など、限られた時間でトレーニングをスムーズに進行するための工夫を施しました。

● 成功のカギ3:運営の複雑化を抑えつつ、システムの機能を有効活用

サイコム・ブレインズのトレーニングポリシーは、受講者自身の内発的な気づきを引き出して、学びに昇華することです。そのため、リアルな集合研修のプログラム設計にあたっては、講師の一方的なレクチャーは最小限にして、講師と受講者、あるいは受講者どうしの双方向のコミュニケーションを盛り込むようにしています。VCRでこの双方向性をどこまで組み込めるか、運営の複雑化を最低限に抑えつつ、この点を達成することが最もチャレンジングなことでした。具体的にはグループ討議、クラス討議、グループ内ロールプレイ、ケーススタディ、受講者相互のアドバイス、講師やトレーナーからの知識インプットと個別フィードバックなどを、毎回のトレーニングゴールとプログラム内容に応じて組み合わせました。また知識やスキルのインプットは、事前に映像教材を視聴いただくことで習得していただきました。

今回最も盛り上がったのは、社内トレーナーの方々に部下との面談の悪い例を演じていただいた回です。受講者全員がその様子を画面越しに観察。その後、グループに分かれて「どうすればより良い面談になるか」を討議し、再び全体クラスに戻って、ベストプラクティスを発表し合い、意見交換。あるべき理想像ができたところで再びグループに分かれてロールプレイ。最後に、受講者どうしで面談スキルに対するフィードバックをしました。ある受講者から「バーチャルであることのデメリットは特段感じなかった」という嬉しい評価をいただきましたが、こうした双方向性をバーチャルクラスで実現できたことは、大きな成果であったと自負します。

zoomを使ったロールプレイと振り返りのデモ動画を作成してみました。
ここでは「発言中の人」を自動的に大きく映す機能を使いました。
ロールプレイの後は画面上でスライドを共有し、フィードバックのポイントをおさえながら振り返りを行います。

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