コラム

2019.12.06

ブームなのに他人ごと?「自分ごとSDGs研修」のススメ

  • b! はてぶ
田村 拓
田村 拓 青山学院大学 社会情報学部 プロジェクト教授 / 一般社団法人 EDAS(イーダス)理事長 / ニホンゴカンパニー株式会社 代表取締役 CEO

日本とSDGs先進国の大きな違い

SDGsは、今やちょっとしたブームです。にもかかわらず、企業の中に目を投じると、SDGsへの取組みは、依然として一部の担当部門の仕事のように見られることが多いと言えます。

私は勤務先が国連グローバルコンパクトへの署名を行い、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)の理事企業となった2007年くらいから、責任者として活動に加わりました。当時はまだMDGs(Millennium Development Goals)の時代でした。その頃に比べれば、SDGsは認知や関心が格段に広がっています。会社から配布されたSDGsのバッジをスーツの襟に付けた人を見かけることも増えました。

かつては、財務情報を投資家(株主)向けに伝えるコミュニケーションツールがアニュアル・レポートであり、その他のステークホルダーに対する企業の社会的貢献を伝えるものがCSR報告書でした。このふたつが統合され、統合報告書のような形に収れんしたことは、株主優先、利益優先を追求した企業が、VUCA時代のサステナビリティの要諦をSDGsに求めたことの表れと言えそうです。自社の統合報告書に、SDGsのテーマに紐づいて決定したマテリアリティを掲載し、その活動や進捗状況を報告する企業は確実に増加しつつあります。

「サステナブル・ディベロップメント・レポート2019」より作成

しかしながら、2019年6月に発表された、国連持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)、独ベルテルスマン財団による世界162か国のSDGs達成度ランキング(「サステナブル・ディベロップメント・レポート2019」)によれば、日本は第15位。上位にはデンマーク、スウェーデン、フィンランド、フランス、オーストリア・・・とヨーロッパの国々が並び、中でも北欧の存在感が高いと言えます。この差はどこにあるのでしょうか。もちろん、政府の力の入れ方というのもあると思います。企業についても、認知が進んだのは主に大企業であって、中小企業の間での認知や取組みは緒に就いたばかりです。

もうひとつ、大きな課題は、気候変動をはじめとして、日本のSDGsへの取組みは、国・自治体、経済界、業界、会社のような「組織単位の思考」に偏っているように思います。そこが「個」、「個人」が尊重されるヨーロッパの「SDGs先進国」との違いのように思えてなりません。本来は一人ひとりの身近な課題であり、毎日の暮らしの中に解決のための行動がある、ということを根付かせるにはどうしたらよいのか。私は、個人がSDGsを「自分ごと」として考える側面に、もっと注目すべきではないかと考えます。