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ASTD国際会議2014レポート
第2回 Yes, and…

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レポート

2014.08.05

宮川 由紀子
宮川 由紀子サイコム・ブレインズ(株)ソリューションユニット
マネジャー/シニアコンサルタント

イノベーションは教えることができるのか?

ASTD ICEでは大小様々なセッションがありますが、大規模なセッションとなるとこの人だかり。ASTD ICEでは大小様々なセッションがありますが、大規模なセッションとなるとこの人だかり。

今回のASTD ICE2014で、私が参加した印象的なセッションをご紹介します。そのセッションは、「Innovation; What Is It & Can it be taught ?」というものでした。

イノベーションがグローバル競争で勝ち抜くために重要な鍵であることは、GoogleやAppleの成功事例からも明らかです。しかしながら、日本企業は技術開発で高機能・高付加価値をつける”Improvement”は得意でも、”Innovation”を起こすのは苦手と言われています。


  • イノベーションを起こす必要性は十分認識されていても、起こすことができないのはなぜか?
  • そもそもスティーブ・ジョブズのような天才だけにしか起こせないものなのか?
  • ましてや起こす方法を教えることは可能なのか?

・・・これらの疑問のヒントになればと思い、このセッションに参加しました。

Creativityは、Behaviorから

セッションのプレゼンテーターはKaren Hough(カレン・ハフ)さんという人でした。Amazonでベストセラーになった"The Improvisation Edge: Secrets to Building Trust and Radical Collaboration at Work"(Berrett-Koehler Publisher 2011)の著者で、2012年に「ビジネス界のオスカー」と言われる、スティービーインターナショナル賞の「もっともビジネスに革新を起こした女性起業家」“Most Innovative Company of the Year 2012” for Women in Business“を受賞しています。

ここで疑問に思ったのが、「なぜ、インプロビゼーションに関する本の著者が、イノベーションのセッションなのか?」ということでした。日本だったら、大学の教授、モノ作りで有名な先生がセッションをするようなイメージだったのですが・・・。

セッションでKarenは、“Innovation, like collaboration, is based in behavior.”というメッセージを提示しました。「イノベーションを起こすCreativityは、Behaviorから生まれる」というのです。それはどういうことでしょうか。そこで彼女は、イノベーションを起こすBehaviorとして良い例・悪い例を、ロールプレイで見せてくれました。

「悪い例」では、相手役になんでもいいから話しかける。それに対して、相手役は全く反応しない、うなずかない、目も合わせない、返事もそっけなく短い・・・という設定です。「良い例」では、話しかけると、相手役が「そうなの?」「本当!?」「へ~いいわね!」と思いきりリアクションしながら聞く、という設定です。このロールプレイは、コーチングや傾聴スキルのトレーニングでも使われたりしますが、話しかけても反応してもらえないと、ロールプレイだと分かっていても心が折れそうになります。反対に、関心をもって聞いてもらえると、「受け入れてもらえた!」という気持ちで前向きになれます。「イノベーションを生み出すCreativityも、アイデアを認めるBehaviorがないと生まれてこない」ということがよく理解できるロールプレイだと思いました。

そして、これをさらに応用させたのが、「Yes, and」の対話ロープレです。

Yes, and…

Yes!, and…Yes!, and….

この「Yes, and」のロープレですが、このセッションでは「私たちは、これから香港に支店を出す通信機器メーカーのマーケティングのメンバー」といった架空の設定のもとに、みんなで新しい支店でのアイデアをだしていきます。アイデアはなんでもよく、思いついたら大きな声で言います。

そして、誰かがアイデアを披露するたびに、みんなで大きな声で「Yes, and」と応えるのです。それに呼応するようにまた新しいアイデアを披露し、そしてまわりの人達は再び「Yes, and」と応えます。

このロールプレイの大切なポイントは、「Yes, and」という時は大きな声で、思いっきり身振りをいれて応えるようにすることです。「Yes」で手のひらを軽く握り、肩につけるように持っていき、「And」で軽く握った拳を振り落とす感じです。

この身振りをいれて「Yes, and」を続けるうちに、初めは恥ずかしそうしていた参加者の雰囲気は、明らかに変わってきました。

fig1

…最初は、消え入りそうな声で始まりましたが、だんだんみんなの声も振りが大きくなり、一体感が生まれ始めました。このまま参加者全員で新しい支店を本当に香港で出せそうな勢いを感じます。

「こんなんでInnovationが起こるわけがない!」と思った方は、騙されたと思って一度職場のメンバーの皆さんで試してみてください。「どんどんアイデアを言ってやろう!」と前向きになっていく自分を発見するはずです。そして、みんなが一つの方向に向かい始めるのを感じるはずです。恥ずかしがってはいけません。「その気になる」ことが重要なポイントです。5分あればみんなの気持ちがガラリと変わるアクティビティです。

これだけでグローバルな競争に打ち勝つイノベーションが起こる、ということはないと思いますが、お互いのアイデアを承認するBehaviorがない組織風土をもつ企業からは、絶対innovationは起こらないだろうと実感したセッションでした。

  • 宮川 由紀子

    宮川 由紀子サイコム・ブレインズ(株)ソリューションユニットマネジャー/シニアコンサルタント

    生命保険会社勤務後、Queensland University of Technology, AustraliaにてMBA取得。在学中は、20か国以上の学生から成るプロジェクトでダイバシティの洗礼を受ける。帰国後、人材育成の仕事に携わり、役員から新入社員、ナショナルスタッフなどあらゆる対象の研修を企画してきた。数年前、スリランカで行われた自社主催の新興国リーダー研修に受講者として参加し、政府・経済界のトップからBOP地域の家族に至るまで幅広く議論・交流することでU理論を体験。『国づくりは人づくりである』ことに気づく。DiSC診断では、iが100%。オフィスのなかで笑い声がだれよりも響くと言われている。

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