鳥居勝幸の研修紀行部下とのコミュニケーション…工夫しだいでもっとよくなる

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コラム

2016.09.12

鳥居 勝幸
鳥居 勝幸サイコム・ブレインズ株式会社 取締役会長

NPO法人 能力活用ネットワーク」の藤原さんによる開会の挨拶

去る9月2日、諏訪湖に近い長野県岡谷市にて「経営者・管理責任者向け 人材育成力強化研修」が行われました。主催は長野県中小企業振興センターです。参加者は長野県内の精密機器・部品メーカー、精密加工会社、食品メーカー、印刷会社などから54名、時間は10時から17時半までの丸1日でした。皆さん終始真剣な取り組み姿勢だったのが印象的でした。

この日のプログラムは、皆さんが日ごろ抱えている人材育成の悩み、特に部下とのコミュニケーションにおける問題を解決するために、ティーチングやコーチングなどの効果的なコミュニケーションを学ぶ、というものでした。今回は皆さんからお聞きしたお悩みの中からいくつかピックアップして、それに対する私からのアドバイスとともにご紹介します。

指導すると「高圧的」「パワハラ」と言われる。そんなつもりはないのに…

「高圧的」「パワハラ」と直接いわれるだけマシかもしれませんね。本当に高圧的な人には面と向かって「パワハラだ」とは言えないものです。もしかしたら部下から程よくイジられているのかも。しかし言葉づかいには気をつけましょう。

部下にパワハラと思わせてしまうのは、指導した内容よりも、言葉づかいや態度が原因であることが多いのです。高圧的な言葉づかいや態度を取ってしまうのは、自分の中に隠れた意図が潜んでいるためかもしれません。存在感を示したい、上下関係をはっきりとさせたい、相手を思う通りに動かしたい…。自分の中にいるかもしれないその潜在意識に内省の矢印を向けられたら、ついつい取ってしまうそのような態度は、息をひそめるのではないでしょうか。

そういえば先日、ある金融会社の社内研修でのことです。50代の男性管理職が話し合っているとき、「若手と女性と外国人の部下がなってない」という話になりました。はじめはそういって、おじさん達は盛り上がっていたのですが、「まてよ、彼らどうしは結構うまくやっているよね」、「もしかしたら、俺たちの態度が問題なんじゃないか」と気づくことができ、横にいた私もほっとしました。「偉そうなオヤジ」のイメージを醸し出すのは時代遅れだと思います。

年齢が離れている部下、異性の部下とのコミュニケーションが難しい

あまり難しく考えない方が。「部下と密なコミュニケーションを取らなければならない」と思い込み過ぎているかもしれません。「部下と仲良くならなければならない」「プライベートの話題ができるような間柄にならなければならない」「仕事以外の悩みも相談して欲しい」…。もちろんそれはよいことですが、「そうしなければならない」とまで思わなくてもよいのではないでしょうか。思い込みが強いからコミュニケーションの取り方がわからなくなり、距離感が難しくなって、部下は逆に近寄りにくくなっているのでは。

上司と親しく話したい部下もいれば、そうではない人もいます。つまり人による。会社は仕事をする場所なので、仕事に支障がなければ、過剰に問題視しなくてもいいのでは。逆に、上司と部下の間に、仕事における共通の目的や目標がありますか? たとえば仕事のビジョンのようなもの。あるいは業務の問題解決。それを話題にすれば、「年齢差があるから話しにくい」といったことにはならないのでは。むしろ仕事の会話を増やせばどうかと思います。

直属の部下3人にそれぞれ仕事を任せているが、何も相談してこない

この悩みをお持ちの方に「相談をしてこない理由」を詳しく聞いてみると、「私に相談すると、うるさく指示されるし、私の話が長いからです」との事。これはすごい自覚です。それがわかっているなら、すでに悩むことはありません。一方こういう考え方もできます。何も相談してこないのは、部下の皆さんが、現在の自分の実力で、やるべき仕事をやれているからでしょう。つまり「部下の手持ちのパワー(能力や権限)」と「果たすべきタスクに必要となるパワー」の間にギャップが生まれていない状態です。だからスキッリした状態になっている。むしろそのことが問題かもしれません。

部下にもっと高い目標や、自分だけでは手に負えない経営課題を与えてはどうかと思います。そうするとパワーギャップが生じ、上司に対して行動を起こさざるをえなくなります。それはつまり報連相という形になって表れるはずです。

より困難な課題に挑戦してもらうことは、部下育成において不可欠なことです。その際、誰に何をアサインするのか、その判断のポイントは何でしょうか。普通考えるのは「誰がその業務遂行の能力を有しているのか」ということと「誰が稼働できるのか」でしょう。加えて「誰の育成機会となるのか」。また「誰がその業務に意欲的か」、つまりやりたいのは誰かという視点も忘れないようにしたいものです。

素直に話を聞いてくれるが、教えたことが本当に伝わっているのだろうか?

これもよくあることかもしれませんね。上司は「○○さん、ちょっといいですか?」と部下を呼び止めます。そのとき、上司に呼ばれた部下は瞬間的に何を思うでしょうか。何人かの参加者に聞いてみました。「まず、何か注意されるのでは? と思うでしょうね」「話は長いのかな? と考えるでしょう」…その通りだと思います。つまり、部下は上司に呼ばれたその瞬間から「上司の話を早く終わらせること」が目的化しています。

だからはじめに必要な時間を言っておくこと。「5分くらい、いいですか?」と言えば、部下はそれだけで安心して話を聞く態勢を取れます。部下も忙しい。もし上司に30分つかまったら、その日の仕事が30分延びるということです。

NPO法人 能力活用ネットワーク」の藤原さんによる開会の挨拶

さて、教えたことが本当に伝わっているのかどうか。良くない例は、上司が「わかりましたか」と言って、部下が「わかりました」と答えるような会話です。これでは部下が本当に理解しているかどうかはわかりません。その場で部下の理解度を確かめたければ、部下に言ってもらうしかない。「じゃあ今の話を整理しましょう。要点をまとめてください」。こうしなければ理解度を確かめたことにはなりませんね。

  • 鳥居 勝幸 Katsuyuki Torii

    鳥居 勝幸サイコム・ブレインズ株式会社 取締役会長

    ⻄南学院⼤学商学部経営学科卒業。富⼠ゼロックス株式会社、株式会社リクルートを経て起業しブレインズを設⽴。2008年サイコム・ブレインズ株式会社設⽴とともに代表取締役 COOに就任、2010年8⽉より現職。マネジメント層への組織コンサルティングとリーダーシップ開発、営業組織改革と課題解決型営業力強化をライフワークとして手掛ける。研修・セミナーではこれまで250社/5万人以上の⼈材を育成、組織の収益改善に大きく貢献している。著書に『営業⼤全』『社⻑が意図した売上計画を完全達成する6つのツボ』(日本経営合理化協会出版局)、『そろそろ、しゃべるのをおやめなさい』(東京ファイナンシャルプランナーズ)、『営業の仕事が⾯⽩いほどわかる本』(中経出版) など。

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