コンサルタントの眼指導者としての気づきと行動変容
― 損害保険会社における代理店指導の強化

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コラム

2017.02.13

内藤 高史
内藤 高史サイコム・ブレインズ株式会社 ソリューションユニット マネジャー/シニアコンサルタント

皆さまこんにちは。前回のコラムでは、銀行C社における入行2年目対象の商談力強化の事例をご紹介しました。今回は、損害保険会社D社における、代理店育成担当者に対する支援事例をお伝えしたいと思います。

代理店として独り立ちできるように

今回の支援の目的は、「プロ代理店研修生」の育成・指導を担当する方の「指導力の強化」です。「プロ代理店研修生」とは、契約社員などの雇用形態で入社し、配属された営業所で損害保険の基礎を習得しながら新規開拓の営業に従事し、3~5年後に代理店として独立することをめざす方々です。

プロ代理店研修生が新規開拓の営業を行う際は、最初は自身の知人や友人に提案活動をする、いわゆる「イニシャル営業」を行います。しかし、それだけではしだいに見込み客が減少してしまうため、知り合い以外の新たな見込み客を開拓する必要があります。毎月一定水準の売上がないと研修生として継続できない、非常に厳しい世界です。

近年、損害保険業界は変化が激しく、若者の車離れや、車の買い替えサイクルの長期化に加え、代理店を介さずインターネットで保険会社と直接契約する格安のダイレクト保険など、顧客の選択肢も多様化しています。したがって、代理店にとっては新規開拓営業の重要性がますます高まっていて、特にD社では飲食業、建設業、小売・サービス業といった中小企業の開拓が、重要な戦略として位置づけられています。

中小企業へのアプローチ方法は、電話とアポなし訪問が基本です。しかし、アポなし訪問を1日50件行っても、その内40件以上は門前払いです。多くの研修生は「門前払いにならないように、なんとか話を聞いてもらおうとするが、うまくいかない」といった悩みを抱え、モチベーションは下がる一方です。また、電話についても同様で「社長につないでもらえない」、「つないでもらっても、すぐに切られてしまう」といった状況です。研修生は、中小企業の経営者と正式なアポイントを得る前の段階でつまずいてしまうことが多いのです。

属人的で曖昧な指導から、体系的・具体的な指導への転換

このような課題をもつプロ代理店研修生を指導・育成するのが、D社で正社員として働く営業社員です。この営業社員は、研修生への指導の他、既に独立した代理店経営者に対する営業支援を行っています。

D社の研修ご担当者によると、「指導者の課題は、個々人の営業力は高いが、そのノウハウが属人的であり、具体的に研修生に教えることができていない。そのため、“新規開拓は量が全て”、“お客様と仲良くなるように”、あるいは“お客様から宿題をもらって帰ってくるように”といった曖昧な指導になっている」との事でした。

私はD社とのディスカッションのうえ、次のような研修と現場で行うOJTをリンクさせる施策を実施することにしました。

<研修の内容>

□ 指導者が持っている新規開拓のノウハウを体系化する
□ 体系化を通して、新規開拓における強みと弱みを明確にする
□ 上記をふまえて研修生にどのように指導するかを考える

<研修後の施策>

□ 現場での指導のバラツキをなくすために、営業所で月1回の「新規開拓勉強会」を開催
□ 指導者をサポートするために、以下のツールを提供する
・ 映像教材(良い例・悪い例をドラマで再現したもの)
・ 勉強会進行ガイド
・ PDCAを回すためのフォーマット
□ 成果が出た営業所の指導者をインタビューし、研修生の指導で成果を出すためのポイントをまとめ、全国の営業所長、営業社員、研修
 生に共有する

指導者としての気づきと行動変容

指導者を対象とした研修は、約120名を4クラスに分け、2日間実施しました。研修の受講者からは次のようなコメントが寄せられました。

□ 今まで感覚的に捉えていた、アポなし訪問で会話が続く理由、続かない理由がわかった

□ 指導に必要な考え方や方法について、既に知っていても、実際にはできていないことが分かった

□ 指導の他にも自身の営業目標があるので負荷はかかるが、具体的に教えることで、自身の営業にも役立つ

□ 教える内容や方法も大切だが、普段の接し方を見直して、研修生をもっと深く理解する必要があると反省した

今回は、研修後に受講者から進捗報告書を提出してもらい、実際に新規開拓で成果が出ている研修生の指導者に対してインタビューを実施しました。そのうえで成果を出すためのポイントを以下の3点にまとめ、全国の営業所長、営業社員、研修生に共有しました。

① 指導者自身の能力・魅力を感じさせている
 過去、現在の業績、今後の営業ビジョン、プライベートなどを伝えている。

② 研修生を深く理解している
 研修生に対して関心を持っていることが伝わっている。研修生の話を傾聴して、具体的なアドバイスをしている。朝礼・夕礼以外
 でのコミュニケーションの接点が多い。趣味、価値観、プライベートなどを深く理解している。


③ 育成に対する強い意志が伝わっている
 育成への情熱を示している。ゴールを明確にしている。アポなし訪問を自らやって見本を示している。

研修では育成のための理論やティーチング・コーチングなどのスキルを学習しましたが、その前提として「育成に対する熱い思いが大切である」ということを、この施策を通して再認識しました。今後も現場で役立つ支援を継続したいと実感した施策でした。

次回は社内講師の研修スキル強化に関する事例をお伝えしたいと思います。

  • 内藤 高史

    内藤 高史サイコム・ブレインズ株式会社 ソリューションユニット マネジャー/シニアコンサルタント

    明治大学政治経済学部政治学科卒業。建設会社を経て2002年より現職。営業組織の業績向上の支援と新人~中堅社員を対象としたコミュニケーション研修の講師を担当。業績向上支援においては、研修担当者とのディスカッションを重ね、研修プログラム、教材、ロールプレイ、ケーススタディ、映像教材等の制作と講師マネジメントを担当。他に、同行営業、コーチング、インタビュー、アセスメントの実施、効果測定等の様々なソリューションを提供。DiSC®インストラクター認定者/ ProfileXT認定コンサルタント/宅地建物取引士。東京都杉並区出身。趣味はテニス。

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