• HOME
  • オピニオンズ
  • すでにグローバルなMARS社が、なぜ「異文化」の問題に取り組んだのか?

レポート

2020.02.04

すでにグローバルなMARS社が、なぜ「異文化」の問題に取り組んだのか? ―The Culture Factor 2019 Conference レポート②

  • b! はてぶ
福永 美保 Miho Fukunaga
福永 美保 サイコム・ブレインズ株式会社
コンサルタント
すでにグローバルなMARS社が、なぜ「異文化」の問題に取り組んだのか?

日本企業の経営のグローバル化にともない、私たちは国内外問わず異なる文化を持った他者と接し、理解し合い、柔軟に対応し、行動や結果につなげることが、これまで以上に求められています。サイコム・ブレインズグループが提供する「異文化理解と適応」に関する研修では、オランダの社会人類学者で異文化・組織文化研究の世界的な権威であるヘールト・ホフステード博士の長年の研究に基づいた理論を取り入れ、ソフトな「異文化」の課題に対して、ハードな「理論に裏付けされた数字」を使ってアプローチする方法を紹介しています。

そのホフステード博士の理論をベースに、文化を経営における重要な要素として研究・コンサルティング活動を行う専門家集団「Hofstede Insights」では、「The Culture Factor」という国際会議を毎年開催しています。2019年は11月13日から3日間、ルクセンブルクで開催されました。サイコム・ブレインズから参加した2名が、セッションの内容や所感をレポートします。

▶ レポート① 企業カルチャーを変えたい、そのための議論に必要なこと

▶ The Culture Factor 2019 Conference ウェブサイト

鉄鋼業から欧州の金融センターへ。変革を続けるルクセンブルクの象徴としてのベルバル市

ルクセンブルクで開催された今回のカンファレンスですが、初日と2日目はルクセンブルク市内から電車で約2時間のところにあるベルバル(Belval)市内で行われました。これまで聞いたこともない街でしたが、ルクセンブルク大学の学部生が通うメインキャンパスがあると聞き、ヨーロッパらしい古い石造りの街並みや、美しい学園都市の風景をイメージしていました。ところがベルバルの駅を出てまっさきに目に飛び込んできたのは、古い巨大な製鉄工場でした。

ベルバルの駅前にある製鉄工場跡
製鉄所があった敷地内にあるルクセンブルク大学のキャンパス

実はベルバル市はかつて製鉄業で栄えた赤土地帯なのですが、「鉄鋼産業から金融センターまで、今後も変革を遂げる研究の中心地に」というルクセンブルクの国家ビジョンのもと、科学分野の研究のシンボルとしてこの古い製鉄工場を壊さずに残しているのだそうです。ルクセンブルク大学は、2011年に生物医学部をベルバル市に開設し、2015年には大学の管理部門と文科学教育学部が、ルクセンブルク市からこのベルバル市に移転しています。

1960年代から経済をけん引してきた鉄鋼業の不振が、現在の金融立国を作るきっかけとなったわけですが、首都であり欧州の金融の中心でもあるルクセンブルク市、そして鉄鋼業の繁栄の面影を残すバルバル市、その両方を訪れることができたのは、大変貴重な経験でした。「ヨーロッパらしい美しい街並み」という私の勝手な想像とは大きく違っていましたが、巨大な製鉄工場に大学の建物が融合して、研究の中心地として復活している姿は圧巻でした。このように古いものを活かして再構築するところは、ある意味ヨーロッパらしいのかもしれません。

RELATED ARTICLES