ダイバーシティ&インクルージョン 研究者の自由、エンジニアの技術伝承と、
年齢ベースの平等意識の功罪

― 早稲田大学ビジネススクール 長内厚教授に聞く(中編)

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対談

2019.05.27

太田 由紀 Yuki Ota
太田 由紀サイコム・ブレインズ株式会社
専務取締役

「多様な人材を活かすことで競争優位に立つ」「人材の多様性がイノベーションを生む」――ダイバーシティ推進、あるいはダイバーシティ・マネジメントの説明として、このようなメッセージが発信されています。しかし、このような説明を自分の身の回りで起こる事象として、具体的にイメージできる人は果たしてどれだけいるでしょうか。女性活躍推進だけでなく、LGBTやシニア世代の活用など、様々なトピックが日々アップデートされる中で、自社の経営に資するダイバーシティとは何か、その本質をあらためて考える必要があるのではないでしょうか。今回は、技術経営を専門としながらダイバーシティの領域でも積極的な発信をされている、早稲田大学ビジネススクールの長内厚教授にお話を伺います。

大学研究者が一律の年齢給なのは、イノベーションにはむしろ合理的?

  • 太田 由紀
    前編でお話しいただいた、「無駄を許容して、効果的に活用する」というのは、とても新鮮な視点でした。確かに、「働き方改革」や「生産性向上」が行き過ぎて、「一律に無駄をなくせ」となってしまうのは、イノベーションの創出とは矛盾しますね。
  • 長内 厚
    日本は「なんでも一律に」とか「平等」が好きなんですよね。「AさんとBさんが同じ会社で同じ年齢だったら、同じ給料・同じ待遇を受けるべきだ」みたいな。だから「AさんにはAさんに合った働き方と、それにふさわしい報酬がある。Bさんとは違うんだ」という発想が、なかなかできない。

    アメリカの大学だと、いわゆるスター研究者のような優秀な教授に大金を積んで来てもらうわけです。でも日本の大学、たとえば早稲田大学だと、俸給表に基づいて年齢給なんです。それが年度ごとに上がっていく。4月1日時点の年齢で給料が決まるので、3月までは僕は45歳の年齢給、4月からは46歳の年齢給になります。
  • 太田 由紀
    そうなんですか!それは意外でした。インセンティブ、たとえば論文とか、研究成果とか、大学への貢献度とかをプラスで評価することはないのでしょうか?
  • 長内 厚
    特別に研究費が付くというのはあっても、給与・インセンティブという点ではないですね。他大学から優秀な研究者を引き抜くとしても、給与は一律です。ただ、大学の場合は難しいところがあって、「学問の自由」を担保するのは「研究の自由」なんです。個々の研究者の研究を、大学が中央集権的に評価するのは、もしかすると恣意的に「この学問をやりなさい」「この研究をしなさい」ということにつながりかねないので。

    ダイバーシティの観点でいえば、今のマジョリティーが面白くないと思っている研究でも、それが大きな将来の種になる可能性もあります。少し矛盾するようですが、「一律の給与にすることで、ダイバーシティが確保される」という可能性もあるんです。だから、今の政府が進めているような、「重点領域を決めてそれだけを研究しなさい。そこには予算を付けますよ」というのは、もしかしたら長期的に考えるとむしろ危ない。今求められている学問が、今の社会にしか還元できないとすると、「誰が将来の投資をするんだ?」ということになってしまいます。

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