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対談

2023.11.16

30代働き盛りの男性コンサルタントが育休を取った時、上司が行ったこと 「男性育休」取得者と上司へのインタビューから考える、Well-being(前編)

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太田 由紀 Yuki Ota
太田 由紀 サイコム・ブレインズ株式会社
取締役

2022年6月、改正育児介護休業法が施行され、産後パパ育休制度の創出に加え、企業が自社従業員の育休取得を支援することが義務化されました。国内における男性育休の認知が急速に進みつつある一方で、実際の取得日数は3日~1週間程度に留まるケースも少なくありません。これまで、多くの日本企業では、男性従業員が中長期間休業することが想定されてきませんでしたが、企業の持続的発展に欠かせない条件として従業員の心身や社会生活の充実が重視されるようになる中、この前提は変わりつつあります。今回は、当社の男性従業員が育休を取得した社内事例として、取得者の今西孝志と上司の江島信之にインタビューをおこない、企業におけるWell-being(※)実現の手掛かりを探りました。

前編では、今西の上司である江島のインタビューを紹介します。


「Well-being(ウェルビーイング)」とは、身体的・精神的・社会的に良好であることで、生きがいや働きがいを感じながら、人や社会とよい関係を築けている状態を表します(株式会社保健同人フロンティアWebより)。

  • 江島 信之

    サイコム・ブレインズ株式会社
    執行役員/シニアコンサルタント

  • 太田 由紀

    サイコム・ブレインズ株式会社
    取締役専務執行役員

生後半年間が特に大変な育児に
おいて、3~4か月の育休取得は理にかなっている

  • 太田 由紀
    今西さんから上司の江島さんに対し、どのように育休の申し出がありましたか?
  • 江島 信之
    最初に申し入れがあったのはまだ安定期に入っていない頃でした。なので、当然「おめでとう」なんですけれど、「まずは元気に生まれることだけを考えよう。仕事のことは安定期になったらまた一緒に考えよう」と伝えました。
  • 太田 由紀
    ご本人は、江島さんに申し出をした際にすごく嬉しかったこととして、「まずはおめでとう」と言ってもらえたことだ、と言っていましたね。
  • 江島 信之
    そうそう。子どもができたということを、私もその時に初めて知ったので。その後、安定期に入ってから、取得期間について「だいたい、3~4か月くらい」という話を聞きました。
  • 太田 由紀
    「3~4ヶ月」と聞いた時、結構長いなと思いませんでしたか。
  • 江島 信之
    長いといえば長いんですけれど、最初の半年って大変です。私には5歳の娘がいますが、娘が産まれて最初の3ヶ月は夜中3時間おきに私もミルクをあげたりしていたので、ほとんど眠れませんでした。そんな中、会社に行って会議にも出て、という当時の生活がとても大変だったことを覚えています。なので、最低そのくらいの期間は必要だろう、理にかなっていると。自身の経験から大変さをわかっていた、というのは大きかったですね。
  • 太田 由紀
    やはり大変さを理解できると、必要な期間なども具体的にイメージしやすいですよね。

    NOTE:本人から申し出があった際の、「おめでとう!」が、「心理的安全性」を強化…上司が行うこと①

    主力メンバーの欠員がわかった時、まず「困ったな」と感じるかもしれませんが、メンバーにとっても社会にとっても慶事、まずは「おめでとう」の一言を。この最初の反応はメンバーのエンゲージメントに大きく影響し、「おめでとうと言ってもらえたことで、育休を取得する自分を受け入れてもらえたと感じた。復帰後に精一杯貢献しようと思った」といった声や、逆に「上司のネガティブな反応がきっかけで転職を考え始めた」といった声もよく聞きます。上司は、育休取得を申し出たメンバーが「自分はここにいてよい。負い目を感じなくてもよい」と思える環境をつくる。これがまず男性育休取得を進める第一歩であり、チーム全体の心理的安全性強化につながります。

  • 太田 由紀
    今西さんは、育休を申し出た当時、フィールドセールスのコンサルタントとして半期ごとの目標数字を持っていました。目標を持つコンサルタントが3~4か月休むとなると、数字、顧客の引き継ぎ、復帰後どうするかなどをやはり考えますよね。その辺りはいかがでしたか?
  • 江島 信之
    年間の予算はもう決まっていますから、育休に入る時期をふまえ、下期の数字の組み立てをどうしたらいいのか、また、戻ってきた後の彼の役割についても考えました。

    顧客を引き継ぐ場合、本人達が一番気にするポイントは評価への影響です。当社は数字と評価が連動しているので、「数か月間だけ仕事をあなたに引き継ぐけど、その間受注した金額はあなたのものになりません」ということをしてしまうと身が入りません。

    ですので、一時的な引き継ぎではなく、全部引き継がせようと思いました。いわゆる普通の引き継ぎです。育休に入るまでには3か月以上ありましたから、むしろ「かなり余裕のある引き継ぎ」ぐらいに私は思っていましたね。退職でバタバタと引き継ぐことも世の中にはいっぱいありますから。
  • 太田 由紀
    今西さんの復帰時期や、そこからどうするかということを考えた時に、江島さんはインサイドセールスとしての活躍をイメージしたということですよね。
  • 江島 信之
    そうです。インサイドセールスは当社の戦略上、非常に重要な位置づけです。さらに、彼の特性も活きるかなという思いもありました。そういったことを伝えながら、今西さんには打診しました。

    彼にとっては、ようやくクライアントと仲良くなってきたという時期でもあったので、少し心配したんですけど、すごくポジティブな反応でしたね。

    NOTE:前もって申請できる育休は、比較的「対応しやすい」。業務効率化などのチャンスにも…上司が行うこと②

    進行中の案件や、未来の業務予定への対応を考えると「この人が数か月間不在になると、現場が対応できない」と思われる方も多いことでしょう。しかし、突然の退職、事故、大病などのケースと比較すると、半年前頃から申し出が可能である育休は、対応に備える時間に余裕があるとも言えます。これを機にメンバーの役割分担の見直し、業務の優先順位の明確化、情報共有の仕組み構築など、業務効率化に取り組むと一石二鳥です。

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