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女性とキャリア女性管理職のリーダーシップ強化ポイント①:
判断の「軸」を持つ~経済学者が見る「意思決定における性差」をどうとらえるか~

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コラム

2015.11.25

太田 由紀 Yuki Ota
太田 由紀サイコム・ブレインズ株式会社 専務取締役

今回の当コラムでは前回に引き続き、当社主催デモセッション『女性管理職育成プログラム(リーダーシップ構築編)』の様子をお伝えします。まずは第1回『判断の「軸」を持つ』における、一橋大学大学院経済学研究科准教授/竹内幹氏のご講演内容の紹介から。

ビジネスにおける男性の意思決定、女性の意思決定~竹内幹氏ご講演より~

竹内幹氏

竹内先生は実験経済学、行動経済学がご専門であり、現在は主に組み合わせオークションや時間選好の研究に取り組まれています。今回は「ビジネスにおける意思決定の男女差」についてご講演頂きました。

竹内先生の研究によると、ビジネスにおける意思決定の男女差はあり得る、とのことでした。中国や米国の大学で行われた、男女取り混ぜて計算問題を解く競争をさせる実験では、成績に性差はないものの、男性の方が自信過剰のためリスクを過小評価する結果、リスクを取ることが多く、女性は男性に比べ自己評価が低いためリスク回避的になる傾向が見られたそうです。この性向は、リスクのある仕事に挑戦し成功した人が昇進していく雇用環境の中では、男女の地位の差異に影響すると考えられるとのことです。

この性向が先天的なものか後天的なものかを確かめるために、女系社会であるインド/カーシ族と、男系社会であるアフリカ/マサイ族を対象に行われた実験についてもご紹介がありました。玉投げをしてバケツに入った玉数を競争する実験で、賞金を競争制にするか固定制にするかを事前に選ぶものですが、カーシ族では女性の方が多く競争制を選び、マサイ族ではその逆であったそうです。この結果は、性向が後天的である、つまり社会環境によるジェンダー規範の刷り込みがあることを示唆しているとのことでした。

ただし、性差全てがジェンダーによるものとは言い切れず、男性ホルモン・女性ホルモンの影響がみられるという実験結果もあるそうです。

いずれにせよ男女の意思決定の差は、株式売買やオークションにおける入札行動、交渉に臨む態度の違いとなって現れるとのことです。また女性の方が信頼関係や利他性を重視するという、社会的選好における性差も、経済学上では知られているそうです。

以上をまとめると「ビジネスにおける意思決定において、男女差はあり得る。しかしその理由については解明の途上にある」ということになります。

ご参加者の感想

竹内氏は、豊富な実験結果やデータを提示し、事実を積み上げて上記を説明して下さいました。事実から導き出される仮説のみをあくまで仮説として伝える姿勢に、学問や聴衆である参加者に対する誠実さが強く感じられました。

ご参加者からは、次のような感想を頂きました。

  • 客観的に男女の違いを認識し、受容できる内容だった。
  • 資料(グラフ・統計・写真)を使用して経済学者の視点から、男性・女性の行動の違い、条件・環境が変わった時の行動についてお話を伺うことが出来て良かった。
  • 男女の差を科学的視点で知ることが出来、大変興味深かった。この違いを活かしていくことが出来ないか、ということも課題だと感じている。

「意思決定における性差の傾向」をニュートラルに認識し、内省する

太田由紀

今回「女性はどうも〇〇らしい」「男性はいつも□□だ」と個人の感覚で語られがちなことを、経済学者の視点から読み解いて頂いたことは、非常に意味のあることと感じます。個人の感覚となると、単なる「バイアス」(思い込み)と評されてしまうことも多く、現実に存在する事実ととらえにくくなります。そうなると、たとえそれが議論の俎上に載ったとしても感情論に終始しがちで、建設的に論じることが難しくなります。

性差の傾向は傾向として、良い・悪いではなくニュートラルに捉えたうえで、自分にその傾向はあるか、どの程度あるか、どのようなときに出現するかを認識することが大事です。例えば当コラムで度々言及している「自信のない女性管理職が多い」ということについても、本人の責任に拠るものではなく、見方によっては女性が自信を持てないのではなく、自信過剰の男性が多い、ということになります。自己評価が低めの人が、自信過剰傾向の強い集団のなかで力を発揮するには、それなりの心構えや準備が必要になるのは当然のことです。

意思決定において重要なのは、大きな誤りを犯さないための自分なりの「軸」を持ち、それを大きく揺るがせないことです。自分の中にある性差の傾向を有無も含めて認識したうえで、それが意思決定において強みとなり得るか、逆に自分の「軸」に偏りを与えることが無いか、或いは修羅場において意思決定に揺らぎを与えることが無いか内省しておくことが大事です。

最後に一つご紹介です。

当デモセッションでご参加者から頂いたご意見等も踏まえ、本年5月より公開講座『女性管理職育成プログラム リーダーシップ構築編』を開講致します。詳細は下記URLをご覧頂ければ幸いです。

<公開講座>
女性管理職 育成プログラム〜リーダシップ構築編(全3回)〜
http://www.cicombrains.com/open_class/japan/20160513.html

  • 太田 由紀 Yuki Ota

    太田 由紀サイコム・ブレインズ株式会社 専務取締役

    一橋大学社会学部卒業。株式会社リクルートにて中小企業の新規顧客開拓営業、および求人広告媒体の編集制作を担当。キャリアや人生を自ら切り開き構築する人々とともに歩み、支援したいという思いから1986年ブレインズ株式会社を設立。2008年にサイコム・インターナショナルとの合併を経て同年より現職。同社の人事を統括するとともに、研修プログラムの開発に力を入れる。また、講師としても約1万人への研修実績を誇る。担当研修はリーダーシップ強化研修、意思決定力強化研修、ビジョン立案強化研修、OJT強化研修、キャリア開発研修、UPAビジネスコミュニケーションスキル研修、UPAネゴシエーションスキル研修、UPAコーチングスキル研修など。近年では管理職になったばかりの女性とその候補に対する「女性管理職育成講座」や、女性管理職を育成する立場にある男性上司に対する意識改革の研修を立ち上げ講師を務める。

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