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イベントレポート

2022年8月9日開催オンラインセミナー「メンバーの知を引き出すファシリテーションスキル~協働による課題解決やイノベーション創出のためにマネジャーが身に付けるべきこと~」 エキサイティングな『ミーティング・ジャーニー・マップ』を描こう!

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2022.08.24
小西 功二 Koji Konishi
小西 功二サイコム・ブレインズ株式会社
ディレクター / シニアコンサルタント

サイコム・ブレインズでは、8月9日(火)のランチタイムにオンラインセミナーを開催しました。テーマは「メンバーの知を引き出すファシリテーションスキル」。当日は70人を超える方々にご参加いただき、本テーマへの関心の高さが伺えました。改めて御礼申し上げます。

本レポートでは、オンラインセミナーの内容をベースに、効果的に会議をファシリテートするためのスキルについてあらためて解説します。また、参加者の皆様からいただいた事後アンケートの中から、重要トピックについて、いくつか触れたいと思います。

イベント概要

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会議前に行うべき「場のデザイン」が、「場の活性化」を左右する

会議の場で、メンバーから効果的に意見を引き出し、それらを統合し、新たな『知』としてまとめ上げるさまは、“有能”感が高く、注目されがちです。しかしながら、会議の「場の活性化」を左右するのは実はその前段階としての「場のデザイン」です。参加者の皆様の事後アンケートを拝見しますと、この点に多くの賛同をいただきました。とりわけ、ゴールの設定と、ゴール達成のためにクリアにすべき論点を分解し、アジェンダに落とし込むという点については、多くの方に重要性を認識いただけたようです。

会議に“エンタメ性”は必要か

会議を開催するにあたって、その目的やゴールを設定することは多くの方が実行していると思われます。しかしながら、当社が実施するトレーニングやワークショップを通じて思うことは、それらの設定が“甘い”ということです。甘いとは、抽象的で、目的やゴールとして扱うレベルにまでブレイクダウンして参加者に共有できていないが故に、参加者が達成イメージをビビッドに描きにくいということです。当然、どのように貢献すべきか分からないまま「お客様状態」で参加することになります。更に言えば、もっと参加者のイマジネーションを刺激するような、あるいは参加者の感情を揺さぶるような、絞り込みや尖り、挑戦的で挑発的なゴール設定があっても良いと思います。会議を活性化するためには、そういったエンタメ性も必要ではないかと、個人的には感じます。

日本企業の会議は、率直に言って退屈なのではないでしょうか。

そういう意味では、会議の参加者の人選にもこだわりたいところです。惰性で毎回同じようなメンバーを集めているようでは、生産性は上がりません。目的・ゴール志向で「問いに答えを出せる可能性が高い、選りすぐりのメンバー」を毎回厳選すべきです。招集がかかることが誉になるような人選も、ファシリテーターの力量なのです。

『ミーティング・ジャーニー・マップ』で“場の空気”を可視化する

エンタメ性と言えば、今回のセミナーで実験的にご提示した『ミーティング・ジャーニー・マップ』に、多くの参加者に関心を寄せていただきました。ターゲット顧客のニーズを掴んだり、タッチポイントの改善に活用するマーケティング手法である『カスタマー・ジャーニー・マップ』を、ファシリテーターの「場の活性化」のためのツールとして応用してみたのですが、ユニークだとの評価をいただきました。

場の活性化フェーズにおけるファシリテーターの大きな役割の一つを、参加者の期待感のマネジメントや感情曲線の引き上げだとすると、こうした場の空気を可視化するツールは有効です。毎回のアジェンダの用意とは別に、こうした『ミーティング・ジャーニー・マップ』を描いてみることも、ファシリテーターの重要な準備と言えそうです。

このミーティング・ジャーニー・マップを眺めてみると、あらためて会議の冒頭が第一関門であることがよく分かります。実は、私がトレーニングやワークショップでファシリテーターとして登壇する際も、“はじめの数分間”には非常に気を遣っています。参加者の緊張や警戒心を解き、「心理的安全性」を確保すること、参加者の期待感と貢献意欲を引き出すことが重要です。

多様な意見を取り回すために持つべきは「コンセプチュアルスキル」と「ダイバーシティ・マネジメント力」

ミーティング・ジャーニー・マップから、もう一つの難所が終盤にあることが分かります。参加者の心理的安全性が確保されたならば、多様な意見が噴出します。セミナーでは、意見が噴出するようにファシリテートするさまを「ラグビーボールをパスするように問いかけを回す」と表現しましたが、これが奏功すれば、多様な立場、背景の異なる参加者から多様な意見を引き出せます。これ自体はとても良いことですが、ファシリテーターとしては交通整理することが必要になります。セミナーでは、この議論の整理と深掘りのイメージを『クイック&ラフにロジックツリーを描く』としてご紹介しました。

ロジカルシンキングはファシリテートのためのベーススキルの一つだと思いますが、その場に臨んでまとめ上げるならば、厳密性にこだわる必要はなく、クイック&ラフで十分です。要は、参加者のイマジネーションを搔き立て、更なる発言を引き出したり、思考を深めさせたりするための着火点となればよいわけです。言葉と図表の変換作業を通じて、行間を読むことや意図を深く理解することにもなるので、おすすめです。いわゆるコンセプチュアルスキルですね。

もう一つ、終盤の場の活性化で参加者の関心が高かったのは、アンコンシャス・バイアスと、そのリフレーミングです。

本稿の前半で述べた「挑戦的で挑発的なゴール設定」の考え方を問いかけにも応用できそうです。「それって、どんな事実に基づく意見なの?」とダメ押しの強制内省を促す、「もう、常識的な考えや“当社らしい”優等生的な考えは一旦、捨て去って…」と、参加者に挑んでいく、「それが本当なら我々は分かり合えない存在になるけど、それで問題は解決するんでしたっけ?」と、あえて極論をぶつける、「この議論って、そもそもどこへ向かおうとしているのでしたっけ?」と、議論が白熱すると忘れがちな本来の目的・ゴールを意識させるために、ファシリテーターが活用したい問いかけの数々です。

こうした一見、「お行儀が悪い」問いかけのテクニックは、あまり市販の書籍には見当たらない印象です。しかしながら、参加者の、時にはファシリテーター自身の凝り固まった固定観念を打ち崩すには、有用かつ実践的なテクニックであり、参加者の皆様の関心が高まった所以なのかもしれません。

人材育成の場として会議の場を活用する

組織のフラット化と、マネジャーのプレイング化が進んだ今、上司が部下を手取り足取り手厚くOJTできる機会はもはや過去の話です。今後、ジョブ(職務)を基軸とした雇用制度や人事制度が日本企業にも浸透してくるとすると、仕事の単位は『プロジェクト』となり、案件毎に専門性の高い人材がチームとして編成されることになります。固定的な関係性の中で、上司や先輩がじっくりと新人・若手に向き合う機会は少なくなっていくのかもしれません。さらに、コロナ禍によるリモートワークシフトは、『仕事の個別化』に拍車をかけ、自律性は今や新入社員にも求められています。

新人・若手に基礎的教育を施す機会が失われていく中、会議は彼ら、彼女らを育てる機会の一つとして活用できるはずです。会議のようなオフィシャルな場で、会議テーマに貢献するような発言を求めることは、当人に深い思考を促し、コミュニケーション能力を磨くことにもつながるからです。他者の意見を理解する、対話を嚙合わせる、自身の意見を分かりやすく表現する…全てが学びにつながります。これからのマネジャーには、是非ファシリテーションを人材育成のアプローチとしても活用いただければと考えます。

  • 小西 功二 Koji Konishi

    小西 功二Koji Konishiサイコム・ブレインズ株式会社
    ディレクター /
    シニアコンサルタント

    神戸大学文学部卒業、名古屋商科大学大学院MBA。中小企業診断士。
    前職では自動車メーカーのコンサルティングファームにて、系列ディーラーの経営改⾰を⽀援。販売台数の増加、利益拡大、赤字経営からの脱却、後継者育成など幅広い支援業務に携わる。2013年、サイコム・ブレイ ンズ入社。顧客企業のパフォーマンスが向上し、「社員が元気になる」様な研修プログラムの開発・提供に力を注いでおり、人や組織がよりよく変化していく事を体感できることが最大のモチベーション。大阪府堺市出身、趣味は映画鑑賞と車の運転。年に一度は10日間の一人旅に出ている。

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