コラム

2020.06.04

「アフター・コロナ」の営業部門を考える ―4つのシナリオと生産性向上

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小西 功二 Koji Konishi
小西 功二 サイコム・ブレインズ株式会社
ディレクター / シニアコンサルタント

オンライン面談は、 遊びのない空間?

ここで、アフター・コロナの営業環境をもう少しリアルにイメージすることで、営業生産性向上の方向性をあぶり出してみたいと思います。まず、対面での面談機会は激減するのではないでしょうか。そうすると、物理的な担当エリアは消滅し、営業にとって必要悪であった移動時間も消滅します。

Web会議システムを活用したバーチャル商談が常態化することになりますが、デジタルの世界には『遊び』がありません。従来型営業にあったいわゆる『表敬訪問』や『アポなし訪問』が存在し得ないのです。つまり「近くまで来たので、ちょっと立ち寄りました」「この辺り一帯を担当させていただいている○○です」という常套句はもはや使えません。

加えて、コロナショックで顧客を取り巻くビジネス環境もシビアになっているのは、残念ながら間違いないでしょう。そうすると、アポが入りにくくなる、接待営業ができなくなる(そもそも対面の宴席が嫌われる)、値下げ要求が厳しくなる、など風当たりの強い営業現場が予想されます。当然、「目的不明瞭でも顔だけつないでおく」ような人間関係のみに依存する営業は駆逐されるでしょう。

以上のように、商談機会は極端に絞り込まれ、1回あたりの面談の中身は濃さを増します。顧客が求めるのは、自社にとって価値ある面談であり、営業です。こうした厳しい状況下でも、業績を維持できる営業パーソンが確かに存在する一方、社内、部内のコミュニケーション機会も希薄化する中、ノウハウ伝播がままなりません。人材育成の機会が減る中で、営業人材の二極化傾向に拍車がかかることが想定されます。

案件マネジメントは全権委譲!変化する「活躍する営業」の定義

では、アフター・コロナで求められる営業コンピテンシー、すなわち優績者の行動特性は何でしょうか。結論を先取りすると、以下の6つであると私は考えます。

  • 1『全権委譲』に立ちすくまない
  • 2顧客と自己の分析を怠らない
  • 3面談準備に余念がない
  • 4面談をファシリテートする
  • 5目に見えるアウトプットを提示する
  • 6情報やノウハウの共有にオープンである
アフター・コロナの営業コンピテンシー、マインド&スキル

1 『全権委譲』に立ちすくまない
そもそも営業は比較的自律性が求められる職種ではありますが、リモートワークでその傾向はますます強くなります。顧客との日々のやり取り、案件のマネジメントに関していわば、『全権委譲』状態となりますが、そこでひるんだり、立ちすくんだりしないマインドが必要です。自己のミッションの自覚が強い、営業目標へのコミットが強い人、今、自分のなすべきことがクリアに分かっている人が、活躍する環境といえます。

2 顧客と自己の分析を怠らない
次に、シビアな商談が続く状況下において、顧客の課題解決に対してこれまでよりもさらに強くコミットできる営業が求められます。その第一歩として、顧客は何を欲しているのか、その背景としてどのような課題を抱えているのかという顧客分析は欠かせません。そのうえで、自社と自分はどんなソリューションを提供できるのか、自己内省できる営業が求められます。ここで大事なのは分析の順番であり、あくまでも顧客の課題が起点であることです。顧客の課題を踏まえない一方的な製品・サービスのアピールは、独りよがりだからです。

以上のような顧客分析や自己内省は、それなりに時間がかかるものです。しかしながら、移動時間が消滅したアフター・コロナの営業環境であれば、面談準備に時間をかけることは可能です。入念な準備を経て、顧客にとって意義ある面談テーマを提示できる営業、面談のアジェンダを明確に提示できる営業が、面談アポを獲得するのです。

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