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コラム

2021.01.05

2021年、セルフマネジメントを強化できる組織が一歩抜きんでる ~リモートワーク環境下のマネジャーに必要なこと(後編)~

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小西 功二 Koji Konishi
小西 功二 サイコム・ブレインズ株式会社
ディレクター

多様なメンバーがいるのに「遊び」が少ない?オンライン会議でできること

第四は、会議やミーティングにメンバーを積極的に巻き込むこと。そして、そのためにファシリテーターの役割を担うということです。前編の「組織の課題」でも触れましたが、リモートシフトで、社内外とのオンライン会議が多数詰め込まれるようになりました。そのため、以前よりもひとつひとつの会議では、より短時間で結論を出したり、メンバーの意見を引き出したりする必要が高まりました。ここでも、あくまでも会議で主体となって議論をおこなうのはメンバー本人ですが、マネジャーは、個々のメンバーが会議・ミーティングをより効果的なものにし、目的を達成できるよう、各人を導く、場づくりを行う、といったサポートを行うことが重要です。

ファシリテーターとしてマネジャーが行うことの一つが、アジェンダ(議題)の明示です。情報共有、意思決定、企画立案、チームビルディングといった、「会議の目的」はなにか、そして、今日の会議でどこまで進めるのか、という「会議のゴール」をアジェンダに落とし込み、明示する必要があります。この時、ゴールを達成するための「論点」もあわせて示すことが大切です。このように、アジェンダを事前にメンバーに提示することで、各人に会議に臨むための準備を促します。会議当日は、各人の力量と準備のほどを勘案し、ティーチング、コーチング、あるいは、ファシリテーター役を権限移譲するなどのエンパワーメントを行い、論点に対する意見や回答をメンバーから引き出しながらゴールを目指します。単に事実を共有する場にせず、メンバーの議論を活性化し、最終的に知恵を創造できるよう、問いかけを行う、事実に解釈を与える、などのサポートを行えると理想的です。

ところで、ウェブ会議システムなどを用いたオンライン会議では、「遊び」が生じにくいという特性があります。例えば、会議開始前の何気ない雑談、会議中の、たまたまその日隣に居合わせた同士でのひそひそ話、参加予定でなかった「お偉いさん」のサプライズ同席、といったことが、従来のようにはできません。ちょっとした雑談や意図していない対話は、相手に対する理解を深め、ストレス発散につながる他、思いがけない重要情報を入手するチャンスでもあります。さらに、イノベーションや問題解決のきっかけを作ったり、アイデアのインキュベーター(保育器)となることもあり、実は、ビジネス上の効用も大きいと言われています。リモート下での名ファシリテーターを目指すならば、時にウェブ会議システムの機能(画面共有、チャット、録画機能など)も駆使しながら、雑談やアイスブレイクなどをアジェンダ前の仕掛けとして、意図的に組み込む工夫を検討してみてはいかがでしょうか。

そして、第五に、プロジェクトマネジャーとして、メンバーを支援することです。リモートワークはオフィス勤務と比較して、時間・空間の制約が少ないことから、多種多様なメンバーを、その時々のプロジェクトごとにアサインするようなプロジェクトワークが活発になる可能性が高いです。このことにより、大きな仕事を成すための「ドリームチーム」を編成しやすくなった一方で、プロジェクト成功のためには、これまでと異なる相手とのコミュニケーションや役割分担に戸惑うメンバーへのフォローが不可欠です。具体的には、各人が強みを最大限に発揮できるように、業務やタスクを割り振り、管理するといったサポートが必要になります。

ところで、皆さんは、“Teaming(チーミング)”という言葉をご存知でしょうか。ハーバードビジネススクールのエイミー C. エドモンドソン教授が提唱した概念で、変化に柔軟に対応し、効果的な協働を生み出しながら、常に学習し変わり続ける組織を表した概念です。Teamingは、まさにリモート環境下のプロジェクトワークにピッタリの概念と言えますが、多種多様な人材が個々の強みを発揮しながら協働することの前提条件として「心理的安全性」の担保が重要と言われています。心理的安全性とは、「こんなことを聞いても、言っても、大丈夫だろうか」といった不安を抱くことなく、誰もが気兼ねなく発言できる雰囲気、環境のことです。リモートワーク下でプロジェクトを機能させ、さらに、チームを「学習する組織」に変革するために、マネジャーとして、心理的安全性のある場づくりやコミュニケーションを意識することが必要です。

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