座談会

2021.07.28

人事の仕事がリモートになって、分かってきたこと ~コロナ禍があったからこその「人事としての軸」(前編)~

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今矢 敦士 Atsushi Imaya
今矢 敦士 サイコム・ブレインズ株式会社
コンサルタント

オンラインorオフライン? どちらにせよ「エモい部分」にリーチしたい

  • 江島 信之
    サイコム・ブレインズでも、現在多くのメンバーがリモートワークで自律的に働くことができていると思います。ただ、一方で、メンバーどうしのコミュニケーションが取りにくくなってると感じていて、特に違う部署が何をやっているのか、見えにくい状況です。そういう中で、当社では、毎週金曜日に、部署を問わず誰でも参加できるオンライン雑談ルームを設置するといった、コミュニケーション改善や情報共有のための取り組みをやっています。皆さんの会社でも、なにかそのような取り組みや働きかけがあれば教えてください。
  • 岡本 弘基
    当社では、例えば、コロナ禍でオフィスに来られなくなった最初の頃は、社員に毎日5問、「今日は元気ですか」、「何か不安なことはありますか」といった設問のアンケートを送っていました。その流れを汲んで、その後、月1回サーベイを行うようになって、「どんなサポートが欲しいですか」といった設問で、社員の声を聞くということをやっていました。また、コロナ以前は月に1回開催していた「All Hands Call(全社員向け電話会議)」を週1でやるようにしました。社員の声を聞いて、それを施策に持っていくということを、PDCAサイクルで回していました。

    社内コミュニケーションに関しては、部門ごとに工夫をしています。例えばある部門は雑談をさせるためのアプリを導入し、何気ない会話をする工夫をしています。そのアプリを使うと、Slack上の部門内の他メンバーとランダムにマッチングされ、これまで接点がない知らないメンバーとも、コーヒーでも飲みながらしゃべりましょう、と雑談するように促されるのです。そういった働きかけをやっていました。
  • 高尾 千香子
    お話を聞きながら考えていたんですけど、社内のとある若手が「テクい部分とエモい部分」という言い方をしていて。リモートになっても、テクい部分、つまり技術的・制度的な部分は大丈夫、混乱や大変さはあっても仕事はできる。でも、私たちは人間だから、エモい部分、つまり、気持ちの部分で意外と雑談が大事だった、横に人がいて空気を感じるのって大事だったよね、と。当社でも、オンラインで世界中の拠点がパッと繋がるような機会はすごく増えて、グローバルで社長からジーンとくるようなメッセージが届いたり、オンラインでつないでお茶を飲みながら話すお茶会のようなこともやっています。どこが着地点かはわかりませんが、気持ちの部分をこの環境下でどうカバーしていくかは引き続き課題かなと思います。また、必ずしも「100%リモートvs 100%会社に行く」ではないとも思っています。在宅と出社の比率の落としどころは会社ごとに違うし、オフィスと工場でも違うはずです。そういう部分を鑑みながら、一番働きやすい状況を作っていくことが求められているんだろうなと思っています。
高尾 千香子 氏
  • 谷 圭一郎
    特に、新入社員などはそうだと思いますが、どうしてもリモート下では孤立感が深まってしまうと思います。当社では、会社としてハイブリッドワークをやっていくというメッセージを出していて、緊急事態宣言の間は、必要業務に限定しての出社ですが、解除後は、おおむね半分はオフィスに来て、半分はリモートで組み合わせるハイブリッドのワークスタイルが社内で推進されています。なぜ、ハイブリッドが良いのかについてですが、アイデア出しやブレインストーミングはフィジカルがいい、作業的な業務はリモートでできる、というように、業務の種類に応じた適切な働き方を組み合わせることができます。

    それに加えてもう一つ、場の雰囲気を感じるという点が、オンラインではなかなか難しいと思います。本当に大事なことや危ない状況を話している時の、伝える側と聴いている側双方のピリピリした雰囲気や危機感はフィジカルの方が伝わりやすいと思うんですね。これは社員同士に限らず、マネジメントと社員間のコミュニケーションにおいても同様です。マネジメント側からしても、社員がマネジメントのメッセージをどう感じているか、の温度感などは、実際に社員とフィジカルに同じ場にいた方が瞬時に肌で感じやすい。オンラインで、限られた時間内で行われるコミュニケーションのみでは、熱量や情報の共有のされ方が感じづらいため、オンライン100%ではなく、フィジカルな出社も組み合わせるハイブリッドスタイルを採用しています。実際にオフラインで集まる機会があると、社員の動きの全体像がよりビジュアルでパッと見えるので、そこが大事なんじゃないかなと思います。ただ、オンラインであっても、工夫を重ね、習熟の度合いを高めていけば、あたかもフィジカルな働き方のような熱量や共感を伴ったコミュニケーションは可能とも感じていますので、ハイブリッドのワークスタイルを推進しながらも、個人的にも試行錯誤を続けていきたいと思います。
  • 高尾 千香子
    リモートになったことによって、地方格差がなくなったことはポジティブな変化だと思います。これまで当社で何かを開催するとき、どうしても地方拠点のメンバーには本社に来てもらっていた。逆に、我々が地方拠点に行くときもあって、互いに結構膨大な時間を使って移動、出張しなければならなかったんです。それがオンラインでパッと繋がれるようになったので、本社と支社の機会や情報の格差が減ってきたのではないかなと思います。
  • 岡本 弘基
    それと、地方の新卒の学生が採用面接を受けやすくなりましたね。今までは学生が上京して面接をしていたものが、Zoom一本で面接できるようになりました。それから、人事と社員間の1on1ミーティングもやりやすくなりました。秘匿性の高い人事マターの話ですから、会議室を予約して行うわけですが、以前は会議室の予約がなかなか取れないという理由で面談が先延ばしになりがちでした。今はリモートで、「ちょっと岡本さんいいですか」という感じでポンと社員から相談が飛んでくるので、1on1がやりやすくなりましたね。
  • 江島 信之
    移動時間や場所の確保といった制約がないという、オンラインの分かりやすいメリットがある中で、オフラインでコミュニケーションをすることの意味を再認識したり、オフラインでしかできないと思っていたことも、意外とオンラインできることが分かったり、色々な気づきがありましたね。今後さらにオンライン/オフラインの創意工夫をする中で、どちらを選択するにしても、人事として社員の「エモい」部分にリーチして、いきいきと働いてもらうための知見が蓄積されていくといいですね。オンラインとオフラインそれぞれの長所や向いている用途がますますクリアになっていき、こうやって使えば社員のエモの部分をケアして活き活きと働いてもらえる、ということが見えてきそうですね。
今矢 敦士 氏

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