コラム

2021.09.15

日本の文化が、私たちの自信の無さに影響を与えている? ~グローバル環境における自己肯定感の高め方(前編)

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加藤 円 Madoka Kato
加藤 円 サイコム・ブレインズ株式会社
シニアコンサルタント

謙虚さは集団主義。責任の強さは個人主義。どちらも自己主張の苦手さに影響している

ホフステードの提唱する「文化を理解する6つの次元」の中で、特に日本人の自己肯定感に影響を与えていそうな次元として、集団主義/個人主義(IDV)、女性的文化/男性的文化(MAS)、 不確実性の回避(UAI)を取り上げて、日本人の自己肯定感が低い要因を分析してみたいと思います。

まず、集団主義/個人主義(IDV)ですが、この次元は「コミュニケーションのあり方」を表します。100に近い国では、自分の意見やベネフィットをはっきりと主張することが期待されます。ゼロに近い国では、個人よりも「私たち」、つまり集団の利害を優先し、コミュニケーションにおいては場の空気を読むことが重要とされます。

日本のIDVのスコアは46で、だいたい中間に位置しています。もしかしたら「日本はもっと集団主義ではないの?」と、このスコアを意外に思う方もいるかもしれません。この「中間」というのは非常に難しい、微妙な文化的特徴を備えていると言えます。たとえば、日本のビジネス文化の特徴を表す事例としてよくあげられる「稟議システム」を見てみましょう。「個人の意見に耳を傾けつつも集団や組織の合意に重きをおく」という中間のスコアらしい特徴を見てとることができます。「和をもって貴しとなす」とあるように、日本では和を重んじる一方で、「他人に迷惑をかけてはいけない」「自分の責任は自分でとるものだ」という個人主義的な考え方も同時に存在しているのではないでしょうか。これに対し、欧米諸国のIDVスコアは総じて高く、たとえば、アメリカは91、イギリスは89です。こうしたより個人主義の傾向が強い国の人からは「日本人はあまり自分の意見を言わない、自己主張しない」と思われることが多くなります。

ここで考えたいのは、実際に日本人が自分の意見がないわけではないということです。「自分の意見はあるのに上手く伝えられない」のではないでしょうか。その原因を多くの場合は英語力と考えがちですが、もうひとつ大きな原因がこの文化の影響です。「出る杭は打たれる」「言わぬが花」といった言葉もあるように、日本人はたとえ能力があっても悪目立ちをせず、謙虚で控えめであることが美徳と考えます。そういった日本人の精神が自己主張する自分に多少ブレーキをかけてしまうのではないでしょうか。また、人に迷惑をかけないように配慮したり、人の気持ちを重視するあまり、あるいは、仕事をスムーズに進行するために、意見を聞く側にまわり、他者の意見や決断に従うことも多いのかもしれません。「自分のしたいことではないけれど、やってあげたら喜ぶだろうからやってあげよう」「みんながしているから、やろう」「自分の意には反するけど、こうあるべき」という利他主義、自己犠牲的な考え方や「べき論」で判断しているうちに、自己主張や自己決定をあまり行わない習慣が身についてしまうのではないかと思います。

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