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コラム

2022.10.14

海外赴任は「習うより慣れろ」「とにかく行って、頑張ってこい!」でOK? ~日本本社に期待したい、海外赴任者への教育支援

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今西 孝志 Takashi Imanishi
今西 孝志 サイコム・ブレインズ株式会社
コンサルタント

日本本社からの支援が‟十分でない“ことから生まれるリスクもある

赴任者は現地に渡航後、日本では経験したことのない様々な困難に直面します。マネジメント経験ゼロでいきなり大勢の外国人部下を束ねる、マーケットや財務状況の分析をして現地法人の経営戦略を策定する、外国人ばかりの会議を英語でファシリテーションするなど、日本では従事しなかった業務にあたるケースは数多くあります。また、職場にいる現地社員の多くは「家族との時間や週末の休みのために働いているので残業などもっての外」「業務遂行のためのスキルアップをしない」「成果を出すためには個人の努力ではなくマネジメントの仕組み作りが重要」と考えるので、マネジメントに苦慮したり、労務管理の知識不足で訴訟になりかけるようなこともあります。

プライベートであっても、現地でのコミュニティに加わることで、仕事に役立つパイプを構築するといったことも必要なるなど、公私にわたって自発的・能動的な姿勢が求められます。帯同する家族がいる場合には、パートナーを精神的に支えなければならない、子どもの教育計画を立てないといけないといったことにも対応しなければなりません。

こうした困難に対し、解決に十分に足る知識やスキル、経験を持って立ち向かえる赴任者はおそらく少数でしょう。いくら日本では期待されている社員であったとしても、海外で全てを問題なくクリアできるスーパーマンには中々なれません。現地では、誰かからの手助けが満足にあるわけではないので、多くの赴任者は孤軍奮闘しているのが現状だと思います。赴任者への十分な支援のないまま現地に派遣する状況が続けば、海外市場の開拓・拡大が思うように進まない、あるいは、優秀であるはずの社員が現地で成果が出せず自信喪失してしまい、将来にわたって十分なパフォーマンスが発揮できなくなる、といった事態になってもおかしくありません。加えて、赴任者のメンタルヘルスの悪化や離職率の増加は、「従業員を大切にしていない」という会社への不信感へと発展してしまう可能性もあります。

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