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レポート

2019.01.11

組織において効果的に活用し続けられるアセスメントと出会うためには? ―『Assessment Forum Tokyo 2018』レポート

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齊藤 彩 Aya Saito
齊藤 彩 サイコム・ブレインズ株式会社
ソリューションユニット コンサルタント

どのような人材を求めているのか? どのように育成していきたいのか?
――アセスメントを「単なるテスト」で終わらせないために

続いて午後の分科会の中から、パネルディスカッション「スペシャリストと語るアセスメント導入その後 ~Assessment to Action~ 」をご紹介します。

このセッションでは、主にProfileXT®というアセスメントの活用事例について議論が交わされました。Profile XT®は、「ある人材が組織内の特定の職務にフィットするか」を測定するアセスメントです。たとえば自社の営業パーソンの中からハイパフォーマーの特性(パフォーマンスモデル)を可視化し、回答者とパフォーマンスモデルのマッチングの度合いを測ることができます。

パネリストは、ビー・エム・ダブリュー東京のHRビジネスパートナーの小野田氏、千寿製薬の人事部 マネジャーの木股氏、そして元・経済産業省 大臣官房臨時専門アドバイザーで弁護士の白石氏です。業界も違えばアセスメントの活用の仕方や考え方もそれぞれで、アセスメント活用のイメージが広がった聴講者も多かったのではないかと思います。

パネルディスカッション
『スペシャリストと語るアセスメント導入その後 ~Assessment to Aaction~ 』

ビー・エム・ダブリュー東京の小野田氏からは、トップセールスはどのような人物なのか、ProfileXT®を使い、共通する特性を明らかにする取り組みが紹介されました。同社では、これまでも優秀なセールスやその周囲の方に対するインタビューなどにより、高いパフォーマンスの要因を明らかにする試みがなされてきました。一方で、人による評価には主観が伴うことや、ハイパフォーマーが必ずしも話し上手とは限らず、苦労されたそうです。小野田氏はProfile XT®の活用について、「ハイパフォーマーが通常のセールスと何が異なるのか? これまで言葉で表現できなかったことが表現できるようになったことは、会社にとって大きな収穫だった」と語りました。

千寿製薬の木股氏からは、次世代の幹部人材を登用・育成するための様々な取り組みが紹介されました。同社で本部長などの幹部人材を登用するときには、過去の業務経験、能力、スキル、レポート、面談の他、職務に対する適性から総合的に判断しています。ところが、「職務に対する適性」については、客観的な指標がなかったため、経営層の総意で判断せざるを得ず、これまでのパフォーマンスから主観的に評価されることが多くありました。そこで、「職務に対する適性」についてもより客観的に評価する判断材料が必要であると判断して、2016年よりProfileXT®を導入しました。現在は、本部長基本モデルの他、研究開発、営業、生産の4つの職務についてパフォーマンスモデルを作成し、ProfileXT®の結果から職務に対する適性を確認の上、登用検討時に活用しているそうです。

2社の事例からも分かるように、ProfileXT®というアセスメントの興味深い点は、営業パーソンのパフォーマンスを向上させる、あるいは幹部人材登用における意思決定の精度を高めるなど、自社のニーズに沿って活用の目的や運用の仕方を変えることができ、しかも納得できる答えを出せるところにあります。このように多様な目的を一つのアセスメントで解決できるツールは、なかなか無いように思います。このアセスメントが時を経て回答しても結果が変わらない「信頼性」のあるものであるならば、入社時に回答したデータを昇格時、配置転換など人事施策としても活用することができますし、新規事業を立ち上げる際、メンバーを選出するために活用するなど、自社の経営戦略に合わせた使い方も可能だといえるでしょう。

また白石氏からは、経済産業省で働き方改革に関する施策立案を行ってきた経験から、「これからの時代は、アナログとデジタルを組み合わせていくことで、付加価値を高めていくことが重要だ。人材と職務がフィットするということは、生産性の向上にもつながり、社員も納得してその仕事に取り組むことができる」というお話がありました。

アセスメントは、回答者の特性を簡単に測ることができる便利なデジタルツールではありますが、アセスメントを導入する前の戦略、結果が出た後の解釈、その後の検証に至るまで、組織の中で人と人が主観的な部分も含めて議論し続けるという、ある意味泥臭い部分も必要です。

ProfileXT®は、アセスメントを回答するだけでは終わりません。自組織に合ったパフォーマンスモデルを作るために、様々な議論や検証を経て、納得できる成果物を作る必要があります。これは『自組織がどのような人材を求めているのか? そしてどのように育成していきたいのか?』という、非常に重要なテーマです。そしてこうした議論・検証のプロセスがあるからこそ、アセスメント結果を本人、上司、会社が受け止め、組織においてアセスメントを効果的に活用し続けることができるのだと改めて感じました。

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