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鳥居勝幸の研修紀行「人を喜ばせると、 自分も元気になる」―企業とNPOのシナジーを探る①

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コラム

2016.11.14

鳥居 勝幸
鳥居 勝幸サイコム・ブレインズ株式会社 取締役会長

日本の営業・接客をおもしろくてワクワクする仕事に

研修で受講者から、「営業においてもっとも重要なことは何ですか?」と聞かれたら、私は「お客様に関心を持つことだ」とお答えします。「なんだそんなことか…聞くんじゃなかった」と言いたげな顔をされることには慣れていますが、それ以外に答えようがないのです。

私はこれまで、自身の書籍や新聞・雑誌で営業について随分と書いてきましたが、どのような知識・戦略・スキルも、根源的なこととして「お客様への関心」がないと役に立たず、営業という仕事の目的を果たすことができません。

「お客様に関心を持って喜ばせよう」という、ただそれだけのことを伝えるために活動している団体があります。それが私も関わっている「NPO法人ワクワク営業応援団」です。このNPOは、「日本の営業・接客をおもしろくてワクワクする仕事に」をスローガンに、メンバーたち(我々は「団員」と呼んでいます)がまるで旅芸人のように全国各地で「ワクワク営業セミナー」を開催しています。団員の本業はプロの研修講師やコンサルタントですが、NPOなのでこの活動は組織の利益拡大を目的としていません。

「やれと言われたからではなく、したいからやる」という気持ち


会場の「テクノアークしまね」。周囲は自然豊かなリラックスできる環境で、今回のようなセミナーにぴったりでした。


熱のこもったセミナーで、あっという間に予定の4時間が過ぎました。このあと個別相談会が催され、団員が手分けして参加者の課題解決に取り組みました。


この日の講師は「ワクワク営業応援団」副理事長の中村泰彦さん。世界を股にかけるプロ講師で、これまでに訪れた国は48か国、研修講師としては23か国。まるでゴルゴ13のような人です。

11月4日、島根県の松江市で「ワクワク営業セミナー」が開催されました。主催者は「しまね産業振興財団 島根県よろず支援拠点」です。地元企業の経営者や営業の方々、約30名が集まって、とても熱心なグループワークが行われました。

セミナーに参加する方の多くは、営業について何かしらの「解」、例えば効果的なコミュニケーションスキルや販売テクニックを求めていらっしゃいます。しかしこのセミナーでは、講師からその解を話すことはありません。講師は参加者に問いかけて、一人ひとりの中に記憶として眠っている、「顧客として何かを購買したときに感じた満足感」を引き出します。そのうえで、「どうやって売るか」ではなく「営業としてどうあるべきか」「人を喜ばせる行為とは何か」といった営業が果たすべきミッションを明確にしていきます。またこのセミナーでは、「お節介の焼き方」を体感します。お節介といっても、余計なお節介ではなく、お客様に喜ばれるお節介であり、ソリューション営業(課題解決型のコンサルティング営業)の真髄とも言えます。

参加者の皆さんにセミナーの感想、今後の決意などを書いていただきました。


左は司会を務めた吉澤さん。島根県よろず支援拠点指導員で、ワクワク営業応援団の中国支部長でもあります。中央と右は同じく団員の越後さんと岡野さん。

参加者の皆さんは「来てよかった!」と言って帰られました。立場も仕事も違う人々がコミュニケーションを取りながら進めるグループワークは、多くの気づきをもたらしてくれます。悩んでいたことも、考え方を少し変えてみると、新たな解決策が見えてくるもの。元気の源は、お客様をワクワクさせ、それによって自分もワクワクすること。誰かからやれと言われるからやるのではなく、そうしたいからやる。それが最高レベルのモチベーションなんですね。目標の数字だけを睨んで、お客様を見ていないのは本末転倒。営業の数字などは、そのあとからいくらでも付いてくるもの。これは私が実際に自分の耳で聞いてきた、世の中のトップクラスの営業パーソンやマネジャーの言です。

今回のセミナーを通して、もう一つ気づいたことがあります。不思議なもので、参加者が元気になるだけではなく、講師、団員、事務局はもっと元気になっていました。人を元気にするということは、こんなにも充実した気持ちになるものなんですね。一座の帰路は、松江発19時半の寝台特急「サンライズ出雲」でしたが、興奮の余韻は車内まで続いていました。

計算のない「ピュアな部分」を持つ

話はちょっとだけそれますが、落語家の笑福亭鶴笑さんが代表を務める「国境なき芸能団」というNPOがあります。このNPOは、ボランティアによる落語公演を、日本国内だけでなくブラジルやドミニカなど海外でも行っています。設立趣意書には「笑いに国境はありません。笑いはどんな怒り・憎しみ・恨みも溶解し、親近感と相互理解を深め平和な心を育みます」と書かれています。私はたまたまテレビで先の熊本地震の被災地でボランティア落語会を開催したときの特集番組を見たのですが、鶴笑さんはその中でこのように語っていました。
「こんなに喜んでもらえる、これや、これや!これをやりに芸人の道に入ったんかもしれへんなあ」

ワクワク営業応援団の団員も、それぞれが本業で活躍しながら、NPO活動の中では鶴笑さんと同じような感情を抱いているのではないでしょうか。社会貢献などと大上段に構える必要はないのでしょうが、各々の経済活動とは別に、何かで人を喜ばせる活動を併せ持つこと。それは自分の中に計算のないピュアな部分を持つということでしょう。これからのビジネスパーソンの一つのあり方かもしれません。

計算で動く営利活動と、ピュアな気持ちで動く非営利活動は、相反するものではないと思います。一人の人間の中にきちんとした意味を持って同居でき、その両者は何らかのシナジーを生み出し、トータルな意味での利益を拡大させる。そのようなビジネスモデルが、あちこちで草の根的に生まれる時代が来ているような気がします。

  • 鳥居 勝幸 Katsuyuki Torii

    鳥居 勝幸サイコム・ブレインズ株式会社 取締役会長

    ⻄南学院⼤学商学部経営学科卒業。富⼠ゼロックス株式会社、株式会社リクルートを経て起業しブレインズを設⽴。2008年サイコム・ブレインズ株式会社設⽴とともに代表取締役 COOに就任、2010年8⽉より現職。マネジメント層への組織コンサルティングとリーダーシップ開発、営業組織改革と課題解決型営業力強化をライフワークとして手掛ける。研修・セミナーではこれまで250社/5万人以上の⼈材を育成、組織の収益改善に大きく貢献している。著書に『営業⼤全』『社⻑が意図した売上計画を完全達成する6つのツボ』(日本経営合理化協会出版局)、『そろそろ、しゃべるのをおやめなさい』(東京ファイナンシャルプランナーズ)、『営業の仕事が⾯⽩いほどわかる本』(中経出版) など。

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