対談

2018.02.14

世界で勝つ、全員で勝つ「強くて良い会社」の条件 ― 八木洋介氏に聞く、 戦略・ビジョンのグローバルな共有と実行における経営と人事の役割(前編)

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宮下 洋子 Yoko Miyashita
宮下 洋子 サイコム・ブレインズ株式会社
ソリューションユニット コンサルタント

経営企画部は「大本営的」? …双方向のコミュケーションで、クリティカルな議論が生まれる

  • 宮下 洋子
    競争が激しく環境も刻々と変化する世界でどう戦うのか、どうやって勝っていくのか、という議論を深掘りしたいと思います。たとえば日本企業の場合、本社の経営企画部が3年ごとに中期経営計画とそのための戦略を立てますが、日系と外資で戦略の策定や実行のプロセスにおいて違いはあるのでしょうか?
  • 八木 洋介
    いろんな会社があるので、日系/外資系という切り口自体が危険だと思うのですが、そもそも経営企画部というものが、私にとっては不思議です。極端にいえば会社の戦略を作って「お前がやれ」という部署です。そんな人の言うことなんて聞くわけないじゃない?
  • 宮下 洋子
    まあ、ある意味「嫌われ者」的な存在であることはよくいわれますね…。
  • 八木 洋介
    それは責任を取らずに命令するからですよ。PDCAでいえばPばっかり作ってるわけです。Dが大事なのであって、Dをする人が自らの戦略を立てないで、誰かが作った戦略をやるっていうのがおかしい。GEでは「戦略」という名前のついた部門はゼロでした。基本的にはDをする人が戦略を立てるということになっています。日本の多くの会社はそうはなってない。
  • 宮下 洋子
    日本ではそうなっていない理由は、どんなところにあると思われますか?
  • 八木 洋介
    どうなんだろう…。まあ要は大本営、参謀ですよ。戦時中の「参謀が戦略を決める」というのが続いているんじゃないかな?「OKY(お前が来てやってみろ)」なんて言葉があったけど、現場感覚がなくて机上の空論だけで「お前がやれ」っていうのは、すごく迷惑な話。
  • 宮下 洋子
    事業領域が多角化して、それぞれの市場の状況にもばらつきが出てくる中で、経営企画部だけが戦略を担っているというのは、確かに違和感があります。そう考えると、八木さんがお考えになる一番ベストな形というのは、実行の責任者であるミドルマネージャークラスが経営幹部ときちんとディスカッションして、上にあげてリソースをもらう…といったことなんでしょか?
  • 八木 洋介
    そこは単純なOne Wayのコミュニケーションじゃないですよ。トップダウンでもボトムアップでもない。Two Wayのコミュニケーションを常にやる。トップはこの会社をこうしていきたいとしっかり伝える必要があるし、ボトムの方は、それを一応ベースにしながらも、おかしかったらNoと言わなければいけない。
  • 宮下 洋子
    双方向のコミュニケーションをどこまで真摯に、しつこく取り続けるかというところがキーになってくると。
  • 八木 洋介
    だからこそ、今回のテーマであるビジョンというものがすごく大事で。「どっちを向いている?」「何をしたい?」というはっきりとしたゴールがちゃんと共有されていないと、単に「戦略を作れ」といわれてもできない。当たり前のことだけど、経企は経企だけ、営業は営業だけ、人事は人事だけをやっていればいいのではない。会社としてのビジョンやミッションを決めたら、それぞれの事業部門やファンクションで一堂に会して、みんなで「こうだよね」というのを決めなくちゃいけないですよ。
  • 宮下 洋子
    「本当にここを目指さないといけないよね」というところさえみんなが腑に落ちていたら、たとえば「前回と同じことやっていても、やばくない?」とか、「ずっと同じ人たちが管理職に登用されてるの、おかしくない?」といった、クリティカルな議論が起こると思います。
  • 八木 洋介
    その通りです。私がLIXIL時代…今もよく言いますが「それで勝てるの?」って。たとえば会社が「グローバルで業界ナンバーワンになる」というゴールをもっていたとしたら、「人事が今やろうとしていることは、そのゴールのために機能しているんですか?」と。そうでなければ、それは人事のための人事。会社というのはゴールを持った組織であって、ゴールを持たない人たちが烏合の衆みたいに集またって、勝つわけないよね。
  • 宮下 洋子
    反対に「一見何の問題もなく、穏やかで、スムーズで、仲良くできている状態」というのは、ある意味良くない状態かもしれないですね。「本当に今のままでいいのか?」という本質的な議論が、上はもちろん下からも巻き起こるのが健全な状態であると。
  • 八木 洋介
    「和を以て貴しと為す」といいますが、和が貴いというのは、何かを達成するために和が貴いんです。チームワークというのも、チームとして勝つためにワークするのがチームワーク。ただみんなで仲良くするのは、チームワークではありません。

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