企業文化・理念浸透ワークショップ報告書―HR交流会 in 上海「企業文化・理念浸透〜社内導入のファシリテーションスキル〜」

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レポート

2017.03.23

林 久美子
林 久美子サイコム・ブレインズ株式会社(上海)総経理

企業文化・理念浸透の課題

素晴らしい会社であれば、独自の企業文化と理念を持っていることを弊社は確信している。その企業文化・理念が社員一人ひとりの行動として体現されていれば、統一したブランドイメージを最大限にアピールでき、全社員の力で会社を目指す方向へと導いていくことができるだろう。

しかし、よく見られる状況はどうであろうか。企業文化・理念が社員の行動と一致しているどころか、かけ離れていることのほうがむしろ多い。例えば社員が企業文化・理念の背後に潜んでいる意味を理解しておらず、どのような行動をとればよいのかわからない。独立した意志を持っている社員が組織や上司の要求に縛られたくないなど。さまざまな理由で、本来ある社員の知恵が企業文化・理念浸透に活かされていない。……それでは、どうすれば、会社が提唱する「企業文化・理念」を社員が実行すべき行動にまで浸透させることができるのか。サイコム・ブレインズ上海では、通常の集合研修ではなく、ワークショップの形式を使い、これを実現させるための方法をご紹介するセミナーを3月14日上海にて開催した。

ワークショップの効用

弊社ではワークショップを通じ、参加者が下記のような気分になるよう仕掛けづくりをする。

  • 会社の一員として、安心して、自信をもって自分の意見を発表できる。
  • 自分の意見が尊重される。
  • 自分の提案が正確に受け入れられる。
  • 自分の意見が採用された後の成果を楽しみにできる。だから、会社の戦略と発展に関する課題に対し、何でも前向きに考えて、誠心誠意、精一杯、自分の知恵と力を貢献したいと思う。
  • 同僚や上司と一緒に協働で作り出した知恵の光により、会社の未来に対し自信をもって期待し、皆とのディスカッションでできた行動に対して、主体的にコミットを出したい。

2017年3月14日(火)、25社、約30名の日系企業中国人社員とサイコム・ブレインズ上海のファシリテーター、コンサルタントは一団で、素晴らしいワークショップを作り上げた。約3時間のワークショップを通じて、企業文化・理念を社員の思考、行動にまで落とし込み、社員のコミットをもらえる行動一覧表を作るプロセスを皆で体験した。

ワークショップの進め方

参加者同士が共感し、ワークショップの場に安全空間を提供

まずOHCARDという心理学のツールを使い、当時の自分自身の認知状態と気持ちを皆に開示するアイスブレーキングを行った。この活動を通じて参加者に自分自身を受け入れてもらい、このワークショップの場も自分自身を受け入れ歓迎しているという感じを与える事がねらいである。

アウトプットをだすための筋道にそったディスカッション

今回は仮に設定した企業を題材として討議を始めた。参加者はその企業の社員になりきり、与えられたテーマに即してディスカッションを進めた。各グループ1つの企業理念をめぐり、その理念を社員の行動にまで落とし込むための知恵をだしあった。実りあるディスカッションと効果的なアウトプットをだすために、講師はディスカッションの段階を分け、段階ごとにテーマを決め、時間を区切り、皆をファシリテートした。その結果、限られた時間の中で、各グループはメンバーの知恵により、焦点のあるアウトプットを出すことができた。

企業文化・理念を体現する行動を列挙

今回のワークショップにおいて、あるグループは「顧客満足」という価値観に対して、下記の5つの行動にまとめた。

  • 1、 商品生産は、開発段階を含め、顧客利益を主眼として行う。
  • 2、 すべての商品を顧客要求に合わせるために、商品生産段階では、標準化作業を実施する。
  • 3、 顧客の声を常に伺い、タイムリーに対応策を打つ。
  • 4、 顧客のクレームに早く反応し、改善結果を出す。
  • 5、 定期的に顧客訪問をしたり、満足度調査をしたりして、顧客ニーズの最新動向を把握し、サービスの総合品質向上に努める。

最後に脚本を作り、演技の形で文化・理念が浸透できた行動を表現

参加者感想

活動の最後に、参加者の皆さんに感想を言ってもらった。内容を読むと、皆はワークショップの真髄を悟ったと言えるだろう。

  • 会社の理念を全員まで浸透させるためには、社員の意見を取り上げる必要がある。それこそ、皆の支援をもらえる。
  • いままでは、企業文化ならトップダウンしかなくて、社員が絶対受身的になり、実行難だと思い込んでいたが、こんなやり方で社員にどうすればよいかを考えさせれば、実行に移しやすいと思う。
  • 会社では、自分の本音を言わない状態がほとんどである。ワークショップなら、平等に意見発表ができる。参加者の気分を配慮できた上に、全員の意見も拾い上げて、より目標達成に役立てる。
  • このやり方は非常にインタラクティブで、わかりやすい。社員研修の中でもこのようなやり方を取り入れたい。
  • お説教ではなく、考え方を導きだす方法なら、コミュニケーションのドアをよりよく開ける。
  • HR部署は、人事関連の企画が多くて、大抵の時は限られた範囲で自己模索しているだけである。今後はできるだけ他部署とコミュニケーションを取り、皆の力を借りてみる。

以上によりワークショップに対して、直感的なイメージを感じていただけただろうか。ワークショップは参加者の当事者意識を最大限に喚起する。皆が協働で考え、平等に意見を出した上で決まった行動に対しては、全員のコミットする気持ちが強くなるという作用がワークショップにはある。

ワークショップ成功のポイント

成功するワークショップのためには、どのような条件が必要なのであろうか。集団の知恵のシナジーをだし、企業が目指す方向に皆がコミットすることがワークショップのねらいである。そのためには、皆がオープンマインドで参与できる環境、企業側の社員への信頼感、明確な目標設定が必要となる。そして何より重要なのは、皆の知恵を引き出すことのできる良質なファシリテーターとシナリオである。社内での実行にまだ不安のある場合は、初期段階では外部専門会社に依頼し、慣れてきたら徐々に内製化していくというやりかたが得策であると弊社では考える。

弊社では、長年在中日系企業の人材育成に従事しているが、企業の発展に伴う人材育成の課題は徐々に変化しており、最近では、一般的な集合研修以外に社員が主役となるワークショップ形式も増えてきている。在中日系企業の中国人社員は、指示待ち、受け身と言われることが多いが、ワークショップ形式を使うことで、社員の主体性を引きだし、当事者意識を醸成することにおおいに役立っていることを実感する。

今回の「企業文化・理念浸透」以外にも、「自社におけるリーダーシップのありかた」「5年後の中国事業発展戦略」「現地化経営の実現」「企業風土醸成」「社員のロイヤリティ向上」「社内報連相の浸透」などのテーマで実施したことがある。対象者も中国人リーダークラス、日中社員幹部。全社員等さまざまである。企業様のご要望にあわせ、めざす目標と参加するメンバーにあわせたワークショップをデザインすることが成功のポイントである。

  • 林 久美子 Kumiko Hayashi

    林 久美子サイコム・ブレインズ株式会社(上海)総経理

    岡山大学文学部卒業。卒業後北京留学、黒竜江ハルビン科学技術大学にて日本語講師を務める。1995年より上海に在住。ヤオハンジャパン中国総本部、電通の上海現地法人で営業主任を務めた後、2000年より三菱UFJリサーチ&コンサルティング(上海)有限公司にて在中日系企業向けの人材教育に研修チームリーダーとして従事。公開研修、企業研修、セミナーなどを年間数十コース企画開催し、参加企業はのべ1200社、18000人の実績がある。2009年7月よりサイコム・ブレインズ(上海)の総経理に就任。

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