上海演劇を通じたコミュニケーションスキルの学習——もう一人の自分を発見する

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レポート

2017.05.27

林 久美子
林 久美子サイコム・ブレインズ株式会社(上海)
総経理

これまでのコミュニケーション研修の限界に挑戦:
コミュニケーションスキルを学んでも正しい行動変容が難しい

コミュニケーションの問題は企業にとって永遠の課題である。チームの作業効率が低いのはコミュニケーションがスムーズでないことが原因であり、多くの企業ではコミュニケーション研修をよく実施している。しかしなぜコミュニケーションの問題は依然として改善されないのだろうか?原因をつきつめれば、社員はコミュニケーションスキルや方法を学んだものの、特定の問題にフォーカスした強化訓練をしていないため、学んだスキルや方法が効果的に行動習慣として現れないのではないだろうか。チャレンジングな場面では、往々にして従来の習慣によりコミュニケーションをとってしまう。これがコミュニケーション研修の効果がないと言われる所以である。それではどうすれば社員のコミュニケーションスキルを正しい行動習慣に変えることができるのだろうか?この問題にフォーカスし、サイコム・ブレインズ上海では、4月19日午後「演劇を通じたコミュニケーションスキル研修」紹介セミナーを開催した。10数社20数名のHR担当者が参加し、演劇形式を通じコミュニケーションスキルを強化し、正確なコミュニケーション行動習慣を醸成するセッションを体験した。

コミュニケーションを戯劇化する:
企業劇場の形式を通じいかにしてコミュニケーション行動を改善するか

今回のセミナー講師は上海戯劇学院表現課の孫講師である。孫講師は長年世界著名企業や政府機構に対し研修を実施しており、戯劇形式を用いた企業劇場研修モデルを開発した。この研修は主として企業管理者のソフトスキル、影響力、コミュニケーションスキル、EQを向上させるもので、戯劇シーンによる体験式の研修であり、孫講師は中国における「企業劇場」研修の先駆者である。本プログラムはニューヨーク大学人類表現学がCIAに対して実施しているトレーニングである。戯劇の要素をコミュニケーションスキルのアドバンストコースに導入し、戯劇鑑賞とそのリハーサルをトレーニングに導入し、参加者にさまざまなシーンの中のさまざまな役割を演じさせることで、さまざまな人物のコミュニケーション上の問題や障害を体感させる。そうすることで参加者の感情を刺激し、突発事項に対応し、生活や仕事上の各種コミュニケーション上の難題を解決する。また反復練習することでコミュニケーションスキルを強化し、短時間で学んだ知識を行動へ転化させ、学んだスキルを意識して使うことから無意識で使えるようにする。在本プログラムは交通大学安泰学院や復旦大学MBA、その他多くの企業大学の中にも導入されており、参加者の好評を博している。

権威的な学術刊行物である《ワシントンテクノロジー》でも本トレーニング方式は、かつてこのように評価されたことがある。「これは恐らく目下世界でもっともすばらしいトレーニング方式である。実際の出来事に直接対峙するので、学習者の反応は真摯で、自分の演じる役割に没頭し終始敏感に対応している。」

“内容を最重要視” & “三脳コミュニケーション”

セミナーを通じて、孫講師はコミュニケーションの内容の重要性を強調した。内容の事前準備がコミュニケーションの第一段階である。内容構成がよければ、コミュニケーションの相手と強いつながりができ、そうでなければ弱いつながりしかできない。また情報の役割もプラスとマイナスの双方向あるので、コミュニケーションのプロセスでは状況と対象を明確にしなければならない。そうでないとよい情報もマイナスの影響を与えることがある。その他、孫講師は皆に“三脳コミュニケーション”の概念を説明した。コミュニケーションのプロセスでは、必ず相手のニーズ(古皮質によるコントロール)を洞察し、情感で包んでから(新皮質によるコントロール)、理性的に表現する(皮質脳によるコントロール)。このようにすればコミュニケーション効果がよい。三脳コミュニケーション理論を理解するために、孫講師は同僚の経験をもとに、場面構成をし、参加者にシナリオをつくらせた後、講師を相手に演じさせた。その演技の観察を通じ、感情的になっている人とのコミュニケーションにおける問題点をあげ、改善意見をフィードバックした。参加者はこのような戯劇形式を通じ、コミュニケーションスキルを特定場面でどのように使うかを体感した。そして伝統的なコミュニケーション研修で学んだスキルの行動転換への難しさを解決した。

事前課題への回答と事後評価

企業劇場の形式を通じたコミュニケーション強化訓練を紹介すると同時に、孫講師は事前アンケートにおける参加者のコミュニケーション上の悩みにも回答した。 “相手が自分の意図を理解してくれない”という悩みに対して、孫講師は、このような状況に遭遇したとき、多くの人は往々にして、発言者が明確に表現していない、と考える。しかし多くの場合はそうではない。これら状況の大きな原因は、発言者の内容の選択に偏りがある、或いは内容の順番に問題がある。そういった場合、情報は効果的に相手の大脳に入っていかない。コミュニケーションにおいて内容が最重要であるとはこういうことである。また別の参加者からは上司が冷淡でコミュニケーションがとりにくいという悩みが提出された。これに対し、孫講師は本人と上司との間にはまだ強い関係性が構築されていない、あるのは弱い関係性だけだと判断した。今後上司と強い関係性をつくるようにしてほしいとアドバイスした。これら講師による回答に参加者も納得した。今回のセミナーは大成功であり、参加者からも好評を博した。

<参加者の感想:抜粋>

  • ➢  講師の専門性は強く、講義内容は豊富である。
  • ➢  講義で紹介した事例はとてもいきいきとしている。
  • ➢  理論もあり、参加者のロールプレイによる参与もあり、とても印象深かった。
  • ➢  コミュニケーションというよくある内容を斬新な戯劇性という相互交流の方式により実施し、印象的であった。
  • ➢  参加者との交流が多く、参加者も十分参与した。
  • ➢  講師は我々参加者の主体的な思考を引き出し、多くの異なる場面で、よくあるコミュニケーションの状況を設定した。
  • ➢  順序立てて教え、躍動感とユーモアがあり、講義もすばらしく、引き込まれた。
  • 林 久美子 Kumiko Hayashi

    林 久美子サイコム・ブレインズ株式会社(上海)
    総経理

    岡山大学文学部卒業。卒業後北京留学、黒竜江ハルビン科学技術大学にて日本語講師を務める。1995年より上海に在住。ヤオハンジャパン中国総本部、電通の上海現地法人で営業主任を務めた後、2000年より三菱UFJリサーチ&コンサルティング(上海)有限公司にて在中日系企業向けの人材教育に研修チームリーダーとして従事。公開研修、企業研修、セミナーなどを年間数十コース企画開催し、参加企業はのべ1200社、18000人の実績がある。2009年7月よりサイコム・ブレインズ(上海)の総経理に就任。