上海非常事態における中国労務リスクマネジメント——定期的なコミュニケーションと制度への正しい理解が鍵

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レポート

2020.5.15

厳 麗
厳 麗サイコム・ブレインズ株式会社(上海)
総経理
メインエントランス

新型コロナ感染予防のため、中国では3月下旬に外国人の入国禁止措置がとられ、春節休暇後に中国に戻れなくなった日本人赴任者が大勢いました。このような方々を対象に、サイコム・ブレインズ(上海)では、4月28日に「コロナ時期における中国労務リスクマネジメントセミナー」をオンラインで実施しました。緊急事態宣言が出ている日本でも在宅勤務が奨励されているため、参加者は滞在中の日本のご自宅から参加していただきました。

在宅勤務の今、オンラインセミナーが主流になってきましたが、日本全国各地に滞在する参加者の顔を見ながらの実施となりました。ケーススタディやグループ討議など、通常の集合研修と同様の活動をし、またチャット機能や投票機能を使い短時間で皆の意思確認を取るなど、バーチャルならではの施策も取り入れ、満足度の高いセミナーとなりました。

日本人赴任者はまだ日本にいるものの、中国では徐々に業務が再開されています。日本人上司からの日常の指示や報告はリモートとなり、リモートならではのストレスや難しさが露呈しているのが現状です。現場を見ながらの確認、タイムリーな報連相、問題発生の未然防止など、現場にいれば対面で把握できることがリモートだと思うようにいかない。しかも日中の異文化という要素も関係してくるため、なおさらコントロールが難しい。このようなジレンマは、今多くの方が抱えている悩みであると想定されます。このようなコミュニケーション上の課題を解決するために、サイコム・ブレインズ(上海)から次のように提言しました。

① オンラインツールを有効活用し、関係各位と顔を見ながら会話する

「顔が見えないので社員のメンタルが心配である」との声が多い。オンラインツールを活用したバーチャル会議の実施がおすすめ。複数人との同時で会議することもでき、顔の表情と声の調子から部下のストレス状況をチェックすることもできる。

② 定期的に対話する機会を設け、平時より対話の頻度を上げる

たとえば朝会と夕会を毎日行う。最初は儀礼的かもしれないが、そのうち毎日顔を合わせるとリラックスした雰囲気も醸成され、普段気になっていることにまで話題が派生し、課題解決につながることもある。リモートワークの今だからこそ、毎日定期的に顔を合わせることが大事である。

③ 業務のことだけを話題にするのではなく、社員個人にも関心を持つ

中国人は家族を大事にする文化圏であるため、仕事のことのみならず、プライベートにまで関心を持つことが良い関係構築の秘訣である。本人の健康状態はもちろんのこと、家族の状況、子供の学校教育などについて関心を寄せると、本人への動機づけにもなる。

④ 上司から主体的にコミュニケーションの機会を持つ

日本企業は報連相を重視しており、部下から積極的に報連相をすることが奨励されている。一方、中国人社員はよほどの関係性が構築されていないかぎり、日本人の想定以上に上司に忖度する傾向もある。「中国人ははっきりと主張する」という印象を持つ日本人赴任者は多いが、現場で発生した問題などについては、むしろ上司の意向を尊重する人が多い。リモート環境では、部下からの主体的な報連相のみに頼っていては、問題が先送りされてしてしまう可能性がある。したがって日本人上司から主体的に対話の機会を設けることをおすすめする。

⑤ 上司はコーチングアプローチにより、社員の主体性を引き出す

「中国人社員は指示待ちであり、言ったことはきちんとやるが、自ら主体的に提案してくることがない」との声が多い。日本人赴任者が日本からリモートで指示がある今は、現場にいる中国人社員が主体的に動かなければ業務は滞ってしまう。逆を言えば、この非常事態は「社員の主体性を伸ばす好機」ともいえる。社員の主体性を伸ばすためには、コーチング的アプローチが効果的であることは周知のとおりである。そのため、日本にいる上司は現場の状況を正確に把握するために、指示命令だけではなく、的確に質問し、傾聴する姿勢が重要となる。今回のリモートワークは、日本人上司の側からみても自身のコーチングスキル向上のチャンスともいえる。

以上のように、上司から主体的にコミュニケーションの頻度を上げ、コーチングに徹することが、現地社員の能力とやる気向上に役立つと考えます。一方で、非常事態であっても中国の労働法規にのっとり労務管理をしていくことも不可欠です。特殊事態に惑わされ、平時と異なる対処方法をしなければならないのかと悩む方もいらっしゃいます。原則に基づきながら柔軟な対応をとり、非常事態を乗り切るためには、やはり普段からのコミュニケーションが大切となります。

■ サイコム・ブレインズ(上海)が提供するサービス

<主な研修領域>

  • ➢  経営・イノベーション人材育成
  • ➢  マネジメント人材育成
  • ➢  営業人材育成
  • ➢  若手
  • ➢  中堅人材育成
  • 厳 麗

    厳 麗Gen Reiサイコム・ブレインズ株式会社(上海)
    総経理

    大学卒業後、海爾集団にて「豊田生産方式導入」のために、生産現場改善のコンサルティングに4年間従事。中智集団にて戦略企画、展示会・フォーラム運営を経験。2007年三菱UFJリサーチ&コンサルティングに入社。2009年6月サイコム・ブレインズに入社。一貫して企業を中心に、人材育成ソリューションの企画、営業、運営、コンテンツ開発などに従事し、多数のFortune 500 companiesの中国法人企業の助力となる。2020年3月より現職。