「日本版O-NET」によって、日本の人事の何が変わるのか? ― HRエグゼクティブコンソーシアム 勉強会レポート

齊藤 彩 Aya Saito
齊藤 彩サイコム・ブレインズ株式会社 ソリューションユニット コンサルタント

2019年3月20日、「HRエグゼクティブコンソーシアム」(運営:株式会社ProFuture)にて、『日本版O-NET(職業情報提供サイト)への対応~職務との適合性をふまえた人材の戦略的な採用・配置~』と題した勉強会が開催されました。勉強会の主催者として、サイコム・ブレインズ株式会社からは代表の西田忠康と齊藤彩が、そしてプロファイルズ株式会社からは福島竜治氏が登壇し、レクチャーおよび事例発表を行いました。

HRエグゼクティブコンソーシアム

次世代の人事を考えるエグゼクティブネットワーク。日本を代表する企業の人事エグゼクティブで構成され、主要な人事課題や先進的事例を研究し共に学ぶことで相互の啓発を図り、経営に貢献する次代の人事部門の在り方を追究することを目的として活動。年間を通して著名な実務経験者による分科会や勉強会を開催している。サイコム・ブレインズは協力会員として2018年より参画。

2020年に運用開始される「日本版O-NET」とは?

西田忠康
サイコム・ブレインズ株式会社
代表取締役社長

O-NET(オーネット/Occupational Information Network)は、米国労働省が運営する職業に関する総合的なデータベースです。約1000種類の職務について、どんなスキルが必要か、どんな人に向いているか、といった詳細な情報を得ることができます。インターネット上で公開されており、求職者、従業員の育成、人事の専門家、学生、研究者と様々な人が利用しています。

日本では、労働人口の減少を受けて人材の労働生産性を高めるために、また政府が推進する働き方改革の流れの中で、2018年2月、厚生労働省が経済産業省と連携して「日本版O-NET」サイトを立ち上げることが発表されました。現在は2020年度からの運用開始に向けて、職業情報の収集やデータベースの設計が進められています。

福島竜治氏
プロファイルズ株式会社

日本人は「就社」という意識が根強く、就職するときにも自分のやりたい仕事より「会社」を選び、また採用する側も社風を重視する傾向がありました。しかし、日本版O-NETの公開により、今後職務と人材のマッチング(ジョブ・フィット)によって、最適な採用、配置、評価、選抜を実現しようという考え方が現実的なものとなってくるでしょう。ハーバードビジネスレビューでは、20年間36万人へのキャリア追跡調査の結果、「職務にフィットしている人材は、そうでない人材と比較して、2.5倍の生産性をもたらす」という研究結果が報告されています(※1)。

働き方改革の流れの中で、人事にはより生産性の高い人材の採用、育成、選抜が求められてくることでしょう。こういった人事の課題に対して、「勘」と「経験」のみに基づく人事から、データを有効に活用する人事に変革することで、判断の根拠を明確にし、透明性を与え、さらには人事機能を向上させる可能性があることを経済産業省が示唆しています(※2)。

勉強会では、米国版オーネットのデモンストレーションを行い、実際にどのようなデータが見られるのか、例として「経理」と「営業マネージャー」に求められる特性を比較しそれぞれの行動特性の違いを紹介しました。このサイトは、誰でも自由に見ることができますので、よろしければ閲覧してみてください。

▶ 参考:O*NET OnLine https://www.onetonline.org/

「ジョブ・フィット(人材と職務の適合性)」を客観的なデータで把握し、人事に活用する時代の本格的な到来

職務と人のマッチングをかけるためには、まずその職務の「あるべき人物像=パフォーマンスモデル」を作成する必要があります。このパフォーマンスモデルは、同じ会社であっても、創業期、安定期、変革期など事業のフェーズによって変化することもありますし、同じ職務でもプレイヤーとマネージャーのように立場によって求められることが変化することもあります。大事なことは、自社がいま、なぜ、どういう人材を求めているのかということをしっかりと考え、あるべき人物像を定義していくことです。

齊藤彩
サイコム・ブレインズ株式会社

人材アセスメントProfileXT®では、自社の特定の職務におけるパフォーマンスモデルを独自に作成することができ、人材データとマッチングをかけることができます。勉強会では、このアセスメントを活用することで退職者が5分の1に減少した事例や、新たな管理職を登用する際の客観的な指標としてパフォーマンスモデルを活用した事例などをご紹介しました。
勉強会に参加された方々は、様々な事例を自社の課題と照らし合わせながら、人事として取り組むべきポイントをつかんでいたようです。また「これまでの人事施策とは異なる切り口を知り、とても新鮮かつ有効な手段だと感じた」との声も多く、「ジョブ・フィット」という考え方の必要性を直感的に感じているようでした。日本版O-NETの導入により、日本社会が「就社」から「就職」という考え方に大きく変化する可能性をあらためて感じました。

  • ※1)出典:Harvard Business Review『Job Matching for Better Sales Performance』Herbert M. Greenberg and Jeanne Greenberg著(September-October 1980)
  • ※2)出典:HRDグループAFT2017「第4次産業革命の下での働き方改革と人づくり革命について 経済産業省講演資料」より
  • 齊藤 彩 Aya Saito

    齊藤 彩Aya Saitoサイコム・ブレインズ株式会社
    コンサルタント

    明治大学文学部卒業。高校教諭を経て大手学習塾に就職し、幼稚園から大学受験までの学習指導や進路指導カウンセリングなどを担当。また、社内のジョブローテーション制度により、企画本部や人事、広報にも従事。その後、2014年、サイコム・ブレインズに入社。英語教育部門を経て、現在は営業力強化や若手育成などの職務を担当。神奈川県横浜市出身。「色彩」に興味があり、AFT色彩検定1級、色彩福祉検定1級、パーソナルカラーアナリストの資格を取得。色彩の影響力について深く知るにつれ、心のケアに役立てられないかとアロマテラピー検定1級、メンタルヘルスマネジメントⅠ種(マスターコース)なども取得。

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