コラム

2021.05.31

あなたのその1on1、実は「なんちゃって」かもしれない? ―リモートワークで差が出る1on1ミーティング成功の秘訣(前編)

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小西 功二 Koji Konishi
小西 功二 サイコム・ブレインズ株式会社
ディレクター

リモートなら傾聴と共感はさらに大事 & 対話を深めるチャンスを見逃さない

ここからは、1on1ミーティングで必要となるスキルについて解説いたします。効果的な1on1を目指す場合、マネジャーは以下5つのスキルを最低限身に付けておきたいものです。すなわち、①傾聴の姿勢、②問いかけのスキル、③コーチング、④リフレーミング、⑤フィードバックです。順番に見ていきましょう。

一つ目は「傾聴の姿勢」です。ここではあえて「スキル」ではなく「姿勢」と表現しています。あるいは「思想」と言っても良いかもしれません。確かに、傾聴には「アイコンタクトをする」、「相手の話に合わせてうなずいて共感を表す」といったスキルも含まれるものの、後述する部下との信頼関係構築に必要な心理的安全性を左右するものはあくまで「姿勢」であり、テクニック論ではないことを強調しておきます。

二つ目は、「問いかけのスキル」です。先ほども述べとおり、1on1とは対話の場であり、部下の成長を目的としたものであるため、面談中は部下が主体となって話すことが重要です。そして、部下から話を引き出すためには、上司の側から効果的な問いかけを行う必要があります。表層的な話題を次々と上滑りさせたところで、学習や成長を促す「対話」には発展しません。どのような問いかけが効果的なのか、順を追って説明いたします。

まず、とにもかくにも会話を活性化させる必要があります。テニスや卓球のように会話のラリーを継続するには、クローズド・クエスチョンとオープン・クエスチョンをバランスよく交互に織り交ぜることが有効です。

また、この質疑応答の合間に「共感」のコミュニケーションをはさむことで、部下が安心してその先の話をつづけることができ、ラリーのテンポはさらに軽やかになります。つまり、問いかけのスキルは共感、すなわち前述の傾聴の姿勢とセットで活用することでさらに効果が高まるということです。なお、共感とは「あなたの言うことをしっかりと受け止め、理解した」と、心情に寄り添うことであり、必ずしも同調する必要はありません。また、共感の気持ちは言葉に出して表明することが大切です。リモート環境下であればなおさらです。

ここで、問いかけによる「対話の深め方」についてお話しいたします。会話のラリーを継続しているうちに、必ず目的達成や課題解決上のカギとなるワードが出てくるものです。このキーワードを逃さずに拾い上げて縦方向に深掘りをしていくことが重要です。例えば、部下の業務上の課題を解決したいのであれば、実際に何が起こっているのかという客観的事実を詳細に押さえることで、解決の手がかりを拾い上げることができます。この時、注意すべきポイントは、事実の解釈、すなわち主観的な意見と事実とを混同しないようにしっかりと区別することです。

客観的な事実を把握した後は、一足飛びで解決策に向かう前に、さらに背景・経緯・原因などを過去にさかのぼって問いかけていきます。悩みや課題の起点を探ることで、より根本的な解決のヒントにたどり着きやすくなる他、事実をさまざまな角度から見つめることで、新たなものの見方や解釈を獲得することもありえます。上司は部下がさまざまな角度から事実を捉え直すことを問いかけによりサポートします。そのうえで、最後に「これからその問題をどのように解決していきたいのか」と、未来に視点を移して対策を問いかけます。

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