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座談会

2021.10.22

2年分の試行錯誤を経て分かった、リモートと仕事のリアリティのつなぎ方 ―2022年の新入社員研修への展望(前編)

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小西 功二 Koji Konishi
小西 功二 サイコム・ブレインズ株式会社
ディレクター / シニアコンサルタント

新型コロナウイルスが日本を襲った2020年春。そして感染拡大の第3波が起こった2021年春。その間、企業はリモートシフトと同時進行で2度にわたり新入社員の受け入れを行ってきました。配属前研修やOJTなど、あらゆる点においてオンラインでのコミュニケーションが中心となった会社も多いのではないでしょうか。その中で、単に新入社員の知識やスキルだけでなく、自律して仕事をすることへの動機づけや会社への帰属意識の醸成など、最近よく言われるようになった「オンボーディング」の観点からの課題が少しずつ浮き彫りになってきました。今回は、新入社員・若手社員の研修を数多く支援してきたサイコム・ブレインズのコンサルタント3名が、これらの観点からコロナ禍以降の企業の状況を振り返り、2022年度の新入社員研修への展望を話し合いました。

本対談は新型コロナウイルスの感染リスク軽減のため、オンラインで実施いたしました。
  • 小西 功二
    (進行役)

    サイコム・ブレインズ株式会社
    ディレクター/シニアコンサルタント

  • 齊藤 彩

    サイコム・ブレインズ株式会社
    コンサルタント

  • 中澤 悠希也

    サイコム・ブレインズ株式会社
    コンサルタント

「はじめまして」でもカメラは基本オフでOK? 不可思議だが見過ごせない新入社員と研修運営の現状

  • 小西 功二
    早いもので、コロナ禍が始まってから1年半が経とうとしており、この間に企業は二度の新入社員の受け入れを行っています。21年度においては、多くの企業が前年度の経験や反省を活かし、オンラインツールも使いこなせるようになりましたが、同時に、リモート環境ならではの問題も鮮明になってきました。お二人は研修の現場についてどうお考えですか。
  • 齊藤 彩
    研修でのグループワークなどを見ていると、今年の新入社員は、人と協働することが少し不得手というか、ためらいがあるように感じています。大学最後の1年間がオンライン授業だったということもあり、人と何かを一緒に行うことに入社前からのブランクがあるようです。また、コロナの混乱の最中、大学から休講や授業の運営方法などについて逐一連絡をもらっていた経験から、社会人になった後も、会社や上司から指示・連絡を「与えてもらう」状況が、当人たちにとってある種当たり前になっている可能性もあります。
  • 小西 功二
    研修で一緒に何かをさせようとしても、新入社員同士そもそもまだお互い一度も直接会ったことがなくてギクシャクしている、そういうことがよくありますね。一方で、今年の新入社員はオンラインツールに初めからよく馴れている感じはありますね。「大丈夫かな」と心配している人事の方よりも、実は新入社員のほうがITリテラシーが高いというケースもあります。
  • 中澤 悠希也
    在学中からオンラインで授業を受けてきているので、Zoomなどのツール上で講義をきいたり、ディスカッションをしたりすること自体は、経験充分なんですよね。ただ、大学のオンライン授業って、学生は全員カメラをオフの状態で行われることが多いみたいです。社会人になった途端、会社から「カメラをオンにしましょう」と言われると、窮屈さやためらいを感じてしまう新入社員の方も多いのではないかと思います。このような背景があるからか、研修の場で、講師や事務局が「カメラをオンにしてください」と声をかけるまで、全員がカメラをオフにしているようなこともあります。
  • 小西 功二
    普段から、カメラをオンにする文化が無い企業もありますし、そのような企業では新入社員が自主的に判断しづらいのもある意味では仕方ないですよね。もしかしたら「会社に指示されないことはやってはいけない」というように、社会人・組織人というものを解釈してしまっているのかもしれませんし。ただ、これは新入社員だけでなく企業を含めてですが、初対面の場や誰かと関係性を深めるような場でカメラをオフにしているとしたら、そこには根本的な問題があるような気がしてなりません。コロナ前は、人と顔を合わせるとき「はじめまして」「こんにちは」と目を見て挨拶していたのに、オンラインになったとたん顔を見せない。そのことのおかしさは、相手を知る、自分を知ってもらう、といったそもそものコミュニケーションの目的を考えたら気づけるはずです。
小西 功二 氏
  • 齊藤 彩
    もしかすると「自分がカメラをオンにした方が、他の人にとって心地がいいだろう、打ち解けやすくなるだろう」といった、他者を思いやる気持ち、配慮のようなものが、この1〜2年で薄れてしまっている可能性もありますよね。でもそれも仕方がないというか、コロナ禍が始まってずっと「一人でステイホームしていなさい」と言われてきたわけですから。一人で過ごすことを頑張っていた人が、いきなり他者をハッピーにするような働きかけはできませんし、なにかしらのフォローや配慮が必要かと思います。
  • 小西 功二
    この問題の背景には、様々な要因が複雑に入り組んでいる気がします。欧米などと比較したとき、日系企業には集団行動や同調圧力の傾向があるように思います。オンライン会議をおこなうときに、周囲の様子をみて「みんなオンだから自分もオンにしなきゃいけないんだ」と察することが求められる一方で、大学でも企業でもリモートでのひとりぼっちの時間が増え、他者のことをおもんばかる機会はあまりない。そのような状況下で、自分なりに会社や周囲の期待にどう応えるか悩んだ結果、「商談や研修の場で、カメラをオフにする」というような、ちょっと不可思議な行動になってしまうのかもしれませんね。

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