コラム

2024.04.24

孤独感のない自律的な「学習の場」の作り方 ~Cicom-LXD『まなラン』を活用した学習体験レポート

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小西 功二 Koji Konishi
小西 功二 サイコム・ブレインズ株式会社
ディレクター / シニアコンサルタント
ダイバーシティが自立型人材を育てる

もし仮に、あらゆる組織に「2:6:2の法則」が当てはまるならば、自律的に学習を進められるのは上位2割の優秀な社員層に限られます。しかしながら、組織の中位6割を占める多数の意識と行動が変わらなければ、本当の意味で組織の変革や業績の向上を成し得ることはできません。

当社の新サービス『まなラン』は、この「中位6割」の行動変容を促すことをねらったパッケージ・プログラムです。具体的には、映像講座とミニワークショップ、学習プラットフォームを組み合わせて標準3カ月の「新しい学習体験(ラーニングジャーニー)」 を提供します。コンセプトは、「集合研修よりも多くの受講者に」「自己啓発よりも高い学習効果を」「より手頃な価格で」「手軽に導入」 です。

この度、『まなラン』の提供開始に合わせて、株式会社ビジネスプラスサポート様の協力を得て、本プログラムの1つである「ビジョン構築&浸透トレーニング」の体験会を開催しました。本稿では、その体験会を通じて得られた気づきや学びを共有しつつ、本プログラムによる学習効果や可能性、今後乗り越えるべき課題について、率直に語りたいと思います。


〝学びの場″に講師がいなくても相互&自律学習が進む「ラーニングデザイン」のあり方

学びの場である『まなラン』にいわゆる“講師”は登場しません。講師ではなく“ファシリテーター”がオンライン学習プラットフォーム上での数か月間のラーニングジャーニーに伴走し、学習者同士の学び合いを促す役目を果たします。当社では、学習の伴走者は当社コンサルタントでも貴社社員の方でもよく、学習のテーマや対象者によって使い分けていただければよいと考えています。

学習者は映像講座で必要な知識やスキルをインプットします。一般論として「一方的なインプット学習」は苦痛です。そこで『まなラン』では、映像講座によるインプットは長くとも30分以内に視聴が完了するように、かつ、動画1本あたりの長さは5分程度のマイクロラーニングになるように設計しています。学習者の興味関心を引き、自分事として考えやすいように、知識とスキルをインプットする講義動画だけでなく、ミニドラマが組み込まれた映像講座もできるだけ採用しています。

さて、学習者がインプットした知識やスキルを使えるようになるためにはアウトプットの機会が必要です。そこで、「知っている」と「できる」のギャップを埋めるための練習場として、『まなラン』にはオンライン学習プラットフォーム上でのチャット、ディスカッション、ミニワークショップがあり、討議やロールプレイ、ケーススタディなどを通じて学びを深めていきます。例えば、受講者は映像講座を視聴した後、学習プラットフォーム上でファシリテーターから投げかけられた「問い」について、その答えを次のミニワークショップ参加までに投稿します。私自身も問いへの答えを投稿しましたが、脳が活性化するような思考の深まりを体感できました。「同じ問いに他の学習者は何と答えているだろう」と気になり、チェックしたりもしました。

ファシリテーターが単なる映像講座の内容の「理解度チェック」に終わらせない、自分事として考えてもらうような効果的な問いを立てることで学習者は自律的な学習を効果的に進めることができる、ということも改めて実感しました。一方で、インプットとしての映像講座の視聴とアウトプットの場である学習プラットフォーム上での投稿やミニワークショップとの間の往復運動を重ねることによって学びを深化させる、そのための問いの立て方については、まだまだ研究の余地がありそう、と思うところがありましたので、引き続き検討していきたいと思います。

「学習プラットフォーム上での学び」については自分が体験するまでは多少の懸念があったものの、結果として「他の学習者のコメントが気になって、つい、投稿をチェックしてしまう」といったように、学習プラットフォームにアクセスしながら楽しむことができました。また、自分の投稿コメントに誰かが「いいね」ボタンを押してくれるだけでもモチベーションが高まるもので、「返報性の法則」というのがありますが、承認欲求を満たしてくれた誰かに向かって、私もまた、「いいね」をつけたり、コメント投稿したりしていました。あらためて、フィードバックは仕事や学習において何かしらの目標やゴールに向かって頑張っている人の“エネルギー源になる”ことを確認できました。

一方で、フィードバックが活性化しなければ「ピア・ツー・ピアラーニング」は成立せず、『まなラン』で目指している学習効果は損なわれます。フィードバックは一見すると自分にとっての直接的な得は何一つないようですが、自分の考えや意見を言語化することそのものが学びになります。とはいえ、これを自覚しながら行動できている人は一握りの学習上級者でしょう。この解決策の一つは、当社ファシリテーターが学習プラットフォーム上の学び合いに関与し、投稿を促すことですが、強制力を働かせたりルール化したりすると学習者の主体性が損なわれ、『まなラン』で大事にしたいコンセプトが歪みます。より良い学習環境の実現に向けた今後の課題として、そのバランスの重要性をあらためて認識することができました。

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