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座談会

2021.10.22

2年分の試行錯誤を経て分かった、リモートと仕事のリアリティのつなぎ方 ―2022年の新入社員研修への展望(前編)

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小西 功二 Koji Konishi
小西 功二 サイコム・ブレインズ株式会社
ディレクター

同期の連帯感も大事だが、上司の元に早く羽ばたかせてあげることの優先度が上がっている?

  • 中澤 悠希也
    私がコンサルティングしている中では、「会議などの場で全員カメラをオフにしている」というお客様も半数位の割合でいます。そのような企業では、「入社して1ヶ月経つのに上司の顔を1回しか見たことがない」という新入社員もいます。企業の文化とは言え、ちょっとかわいそうだなと思います。
  • 小西 功二
    確かに今の新入社員は、少々かわいそうな環境下にあると思います。一方では、そうした状況にある彼らに対して、「早期離職してしまうんじゃないか」「メンタルを崩してしまうんじゃないか」など、企業や人事が気に掛けるあまり、腫れ物に触るみたいになってしまうと、少々よくないのではないかと感じています。
  • 齊藤 彩
    人事も採用に関する数値目標を持っていますし、せっかくこのような大変な状況で自社に来てくれた新入社員を何とか軌道に乗せてあげたいと、手厚くフォローすること自体はとてもよくわかります。ただ、手厚さイコール世話を焼いてあげればよい、いうことではないのが難しいところですよね。どのようなフォローが今の状況において必要で、より強化すべきなのか等、その時々の自社や新入社員の置かれている状況や課題を見ながらの判断に、皆様苦労をされているのではないかと思います。
  • 中澤 悠希也
    例年、内定者研修や配属前の研修において新入社員同士が仲良くなれるようなイベントや取り組みをおこなう企業は多いですよね。ただ、ITリテラシーの高い今年の新入社員たちは、意外と会社や人事からのサポートがなくとも、オンライン上で新入社員同士の横のつながりを深めることは得意だったりします。むしろ、リモート下の新入社員に支援が必要なのは、会社のことや上司や先輩、他部署のことを知ること、いわば縦や斜めのつながりを作ることではないでしょうか。内定から入社、配属までの期間にかけて、あまりオフィスに訪れることがないとすれば、自社にどういう人たちがいて、どのように仕事を進めているのかを知る機会も少ないはずです。

    もちろん、内定者同士の仲を作ってあげることも重要ではあるのですが、リモート環境になって、優先事項が変わってきている。出社できない分、会社は新入社員にもっと組織のこと、配属後の現場のこと、仕事のことを知る機会を意識的に作ってあげなきゃいけない。「今はまだ現場の話をするのはかわいそう」「辞めてしまうかもしれないから、上司任せにするのはやめよう」とか、そういう優しさよりも、どちらかというと、上司の元に羽ばたかせてあげて「現場を感じてきなさい」という機会を作るほうが本人の助けになったりする。新入社員がリアルな現場を感じるための支援がより求められる状況だと思います。
  • 小西 功二
    たしかに自分が社会人になった時も、会社には学生時代とは異なる人間関係があって、そこに馴染んでいくことの難しさ、不安があったように思います。特に、リモートワーク下では、インターンシップや先輩訪問などで入社前に会社の様子を知る機会も減っていますし、新入社員が組織を知り、馴染むハードルは上がっているはずです。

    また、研修期間を経ていざ配属というタイミングで、困難を感じる新入社員や受け入れ先の上司も多いようです。リモート下ならではの、研修期間中の丁寧な扱われ方と、現場に配属されたあとの先輩や上司からとの扱われ方との間に落差があるのではないでしょうか。実際に業務をおこなう現場では、ビジネスのリアリティがありますから、新入社員に対して学校の先生のように何もかも構っていられません。さらに、リモート環境であることも相まって、配属後の新入社員は割と放置されがちです。いきなり「自分で考えて」「これやっておいて」など、メールやチャットで先輩や上司に言われて放置される状況は、新入社員にとっては挫けやすいと言えます。
  • 齊藤 彩
    現場では、利益を出すことが最優先ですから、リモートワーク下で自分達のチームにやってきた新入社員にも当然、一人で自律的に考えて自分で動ける、そのような働きを求めますよね。ですから、内定者教育や配属前の研修の段階から、自律性など配属後の現場のニーズをふまえたスキルをトレーニングして与えてあげなければいけない、ということになります。もちろん、どの企業も新入社員研修をそういう視点で考えていらっしゃるのですが、従来通りにはいかないリモートワーク下では「とにかく配属前に最低限の事は!」と近視眼的なフォローになりがちです。だからこそ、より意識的に長期の視点をもち、武器を与えていってあげても良いのかなと思います。

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