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コラム

2023.02.03

学習者の“学習体験”を重視するラーニングエクスペリエンスデザイン【LXD設計のポイント】

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小西 功二 Koji Konishi
小西 功二 サイコム・ブレインズ株式会社
ディレクター / シニアコンサルタント

学習者を必要とする“5つの瞬間”

LXD設計と従来型の研修設計の大きな違いは、ラーニング・タッチポイントを考慮して、学習資産*を配置し、各ペルソナの学習選好を満たす、すなわち学習者一人ひとりの学習体験を設計する点にあります。

*学習資産とは、社内外問わず、企業がアクセスできるあらゆる学習コンテンツのことで、研修、e-ラーニング、チャットでのディスカッション、映像コンテンツ、インターネット検索、ブログ、書籍、などです。

では、LXD設計の要諦を詳しく見ていきましょう。

●STEP4:ラーニングジャーニーの設計

LXDの設計においてはSTEP2で設定した各ペルソナの学習選好を想像しながら、3つのラーニング・タッチポイントの“配合”を変えてラーニングジャーニーに変化をつけていきます。これが「複線型のラーニングジャーニーの設計」になります。

実際には、フォーマルラーニングを基本路線に沿えつつ、ソーシャルラーニングの環境を整備し、フォーマルとの組み合わせとその利用タイミングを設計することになるでしょう。なお、タッチポイント間の境界線はあいまいで、ときにオーバーラップします(e-ラーニングはフォーマルだが即時的でもある。クラスルームでのディスカッションはフォーマルだがソーシャルでもある、など)。

即時的学習には、学習提供者が管理し切れないものも含まれますが、参考図書や動画コンテンツ、Webサイト、データベースをリストアップして学習者に提供することは可能です。特にインターネット上のコンテンツは玉石混交なので、コンテンツに「お墨付き」や「公認」を与えることは、学習者にとっても有用です。もっとも、フォーマルラーニングで得た知識から有用コンテンツを見極める目を養わせる、あるいはソーシャルラーニングを通じて有用コンテンツを絞り込んでいくプロセスを「学習体験そのもの」と位置付けることも意義があります。

さて、ラーニングジャーニーを設計する際に、役に立つ理論があります。モッシャー&ゴットフレッドソンが2011年に提唱した『学習を必要とする5つの瞬間』です。学習動機が高まる瞬間を、①全く新しいことを初めて学ぶ時、②学んだことの幅を広げる時、③学んだことを行動に移す時、④問題や課題を解決する時、⑤新しいやり方を学び、適応する時、の5つに分類しています。

この5つの瞬間をラーニングジャーニーに巧妙に盛り込んでタッチポイントを設定できれば、学習者のモチベーションは維持できます。特に、学習提供者のコントロールが利かないソーシャルラーニングと即時的学習をデザインする際に有用です。具体的には、①クラスルームでインプットした知識を深めるような問いを学習プラットフォーム上で投げかけ、ディスカッションルームで討議させる、②クラスルームで検討したケーススタディを抽象化して、言語化・理論化させる、③クラスルームで反復トレーニングしたスキルを使って、実際の仕事上の課題解決に応用させる、などが挙げられます。

なお、各ペルソナは全てのタッチポイントを体験し、かつ全体として3~5つの学習資産を活用する(“ブレンデッド・ラーニング”の設計思想)ことを目安としてラーニングジャーニーを設計します。この時、学習者が自らの習熟度やレベル感を鑑みて、不要と思える学習資産をスキップできるようにラベリングしておくと、学習者にとっての使い勝手が上がります。具体的には、学習資産ごとに学習のねらい、学習内容や学習の難易度、獲得できる知識やスキルなどを可視化しておくことです。

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