コラム

2016.01.28

営業パーソンにとっての『お客様』という存在について

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小西 功二 Koji Konishi
小西 功二 サイコム・ブレインズ株式会社
ディレクター

皆さまこんにちは。今回は、「営業パーソンにとっての『お客様』という存在」について考えてみたいと思います。

言うまでもなくお客様は、「自社の商品・サービスを購入してくれる人や会社」ですが、もう少し積極的な意味合いを込めて考えてみたいと思います。私は、営業パーソンにとってお客様は、「自分を最も成長させてくれる存在」と考えたいと思います。その理由は以下3点あります。

第一に、お客様は営業パーソンに考える機会と材料を与えてくれるからです。

お客様は営業パーソンに、「今の商談はここが良かった」「あの提案はこうするとさらに良くなるよ」といったアドバイスをしてくれません。コンペであれば通常、「採用」あるいは「不採用」という結果と共にその理由(良し悪し)を伝えてくれますが、毎回の商談についていちいちフィードバックをしてくれることはありません。

しかしながら、お客様は無意識のシグナルを発してくれます。シグナルとは、商談中の営業パーソンの言動に対する反応のことです。営業パーソンは、商談中にお客様が発するシグナルをしっかりと観察し、その意味について深く考え、自分の言動がお客様の求めるものに沿っていたか否か、内省する必要があります。そのことが営業パーソンに成長の機会を与えてくれると考えます。

第二に、お客様は営業パーソンに変化対応力をつけさせてくれるからです。ここで言うお客様とは特定の人物のことではなく、総体としてのお客様のことです。

要するに、お客様には様々な方がいらっしゃるので、ただ一つのやり方では通用しないということです。一方のお客様にご採用いただけた提案も、他方のお客様には全く響かないという経験は誰にでもあるでしょう。つまり、複数のお客様に同様の商品・サービスを提案するにしても、お客様の置かれている状況や立場、当方との関係性の濃淡などに応じてアプローチを変える必要があるということです。そうした試行錯誤を通じて、営業パーソンは変化対応力を身に着けることができます。柔軟性が磨かれると言ってもよいでしょう。

第三に、お客様は営業パーソンに真剣勝負の緊張感と、その中からしか学び得ない貴重な経験を与えてくれるからです。緊張感の源泉は、ひとつにはお客様とのやり取りが、通常やり直しの効かない一発勝負である点にあります。ふたつにはお客様とのやり取りの多くが利害、対立の構図そのものである点にあります。例えば価格に関して言えば、お客様は出来るだけ安く買いたいが、営業パーソンは出来るだけ高く売りたいというのが、ほとんどでしょう。こうした真剣勝負の緊張感が、学びの純度を高めてくれます。

もちろん研修のように、安心して失敗を繰り返せる環境下で特定のスキルを磨いていくような学びの意義はあります。一方で、実際のお客様と対峙しながら得られる学びは、営業パーソンに飛躍的な成長をもたらしてくれます。具体的に何を学び取るかは、業界や事業内容、営業スタイルにより様々でしょうが、一般的に「場数を踏む」「勝負強くなる」と表現されるような『経験による学び』の効果は、異論がないと思われます。

では、お客様が『自分を最も成長させてくれる存在』だとするならば、我々営業パーソンはどのようにお客様に向き合えば、その効果を最大化することができるでしょうか。

私は、顧客への貢献意欲を高めること以外にはないと確信しています。なぜならば、お客様に貢献したいと強く願うことは、①お客様の発するシグナルへの感度を高め、②お客様の置かれた状況に思いを巡らし、③提案内容に工夫を凝らす手間と労力を惜しまないことに他ならないからです。

顧客貢献のマインドなくしてスキルばかりを高めても意味がありません。それは「手段の目的化」です。また、自社の売上、利益を第一義的に追い求める営業活動も、お客様に見透かさるでしょう。そもそも売上・利益は、顧客貢献の結果としてもたらされるものと心得た方が、商談は成立しやすいでしょう。

ではさらに進んで、顧客貢献意欲はどうすれば高まるでしょうか。もはや難しく考える必要はないでしょう。自分を成長させてくれる人に恩返しをすれば良いだけのことですから。

次回は、人材育成の費用対効果についてお話しいたします。

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