コンサルタントの眼「研修の費用対効果って、どう評価するんですか?」

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コラム

2016.12.16

小西 功二 Koji Konishi
小西 功二サイコム・ブレインズ株式会社 ディレクター / シニアコンサルタント

皆さんこんにちは。今回は「研修の費用対効果」について考えてみたいと思います。皆さんは「この研修って、本当に効果があるの?」とか「研修にどれだけ費用をかけたらいいの?」といった疑問を持ったことはありませんか? そのような疑問に対して、考え方の枠組みをご提供できれば幸いです。

そもそも「研修の効果」とは?

費用対効果の問題を考える前に、そもそも研修の効果とは何なのか、明確にしたいと思います。

いうまでもなく、研修を企画する際には事前にねらいや目的を設定することになります。たとえば、特定の知識やスキルの習得、さらにその先にある売上・利益の拡大、あるいは研修の対象となる部門や階層が抱える課題の解決などです。最近では、女性活躍推進に向けた従業員の意識改革とか、組織文化の変革といったテーマがホットですね。

そうした「ねらいや目的を達成した状態」を研修によって作り出すことができたなら、「研修の効果があった」といえます。

「効果が現れるまでにかかる時間」と「効果の持続性」

次に考慮すべきは、「効果が現れるまでにかかる時間」と「効果の持続性」です。研修のねらいや目的を達成した状態を、「いつの時点で作り出せるか」という問題と、「いつまで持続させられるか」という問題です。

先ほど例として挙げたねらいや目的の中には、研修終了後に即座に効果が出るものもあれば、研修そのものはきっかけに過ぎず、学習内容を受講者が現場で実践し続けることによって効果が現れるものもあります。場合によっては、3年から5年、あるいは10年後に効果が表れることを期待して行われる研修もあります。

「効果の持続性」については、たとえば自転車の運転や泳ぎ方など、通常一度身につければ長い間忘れることのないスキルもあれば、環境変化によって陳腐化する知識や、使わなければやがて錆びつくスキルもあります。

費用対効果を可視化するには?

さて、以上の要素をもとに研修の費用対効果をどう評価するか、考えてみましょう。

たとえば研修の効果が売上や利益に直結していて、金銭価値に置き換えることができるものであれば、ファイナンス理論で費用対効果を測ることができます。

研修による将来キャッシュフローを現在価値に割り戻し、その総額から研修実施に係る総費用を差し引いて、プラスならば「効果あり」、マイナスならば「効果なし」となります。費用に関してもう少し説明すると、たとえば「従業員がその研修に参加しなければ、本来得られていたキャッシュの額」といった「機会費用」も費用とみなします。

研修の効果を金銭価値に置き換え、費用対効果を明らかにするという研究は、各方面で進んでおり、弊社にもお問い合わせをいただくことがあります。ただ個人的な感想をいえば、実務で使うにはまだ課題も多いという印象です。

「費用対効果の大きい研修」とは?

ファイナンス理論にしたがって考えると、費用対効果の大きい研修とは、

① 研修の効果を容易に可視化でき、
② その効果が大きく、
③ 効果が現れるまでの時間が短く、
④ 効果の持続性が高い研修

…ということになります。

私個人の経験でいえば、新人営業パーソン対象のスキルアップ研修がこれに該当します(新人であれば、ベテランの営業パーソンより「機会費用」が小さいですよね)。また、内容にもよりますが、特定の課題を解決するためのワークショップも該当しそうです(ワークショップで解決できる課題かどうか、あらかじめ検討する必要がありますが)。

選抜型の研修も費用対効果が大きい研修と言えそうです。効果が期待できる受講者をあらかじめ選抜するわけですから当然です。ただ、効果が期待できる受講者をいかにして見極めるかという課題は、研修を実施する企業様で常に議論の対象となっているようです。

「実利」と「経営ポリシー」…費用対効果の見極めの軸をどこに置くか?

一方、研修には上記の4つの条件にあてはまらないテーマのもの、つまり効果の可視化が難しいものや、効果が現れるまでに時間がかかるものがあります。そういった研修は「費用対効果が小さい研修」と断じて、実施を見送ってしまってもよいのでしょうか?

たとえば集合研修ではなく自己啓発という位置づけで、従業員の自主的学習に任せているものであれば、「会社として費用をかけない」、あるいは「最低限度の費用しか出さないのだから、効果の大小は問わない」ということになります。資格取得支援などは、実際に資格を取得した場合に限り、かかった費用を会社が負担するというケースもあるようです。

また「マインドの醸成」あるいは「組織文化の変革」といったものは、まさに効果が見えにくく、効果の発現までに時間がかかるテーマの代表格です。しかし、そのような効果の可視化が難しい研修であっても、継続的に実施している企業は少なくありません。毎年一定の費用をかけて取り組みを持続することで、従業員のマインドや組織文化にじわじわと作用するということもあり得ます。また「研修の実施そのものが、従業員の満足度向上に作用して、組織へのロイヤルティを高め、ひいては売上・利益の向上を支えているのだ」という、経営者の信念、ポリシーに基づいて実施される場合もあるでしょう。

以上のように考えると、研修の費用対効果の見極めは、「実利」に基づく場合と、「経営ポリシー」に基づく場合がありそうです。競争の激しい時代にあって、判断基準はますます前者に傾斜しがちですが、人材育成を生業とするものとしては、「経営ポリシーに基づく判断」があってもよいと考えるのですが、いかがでしょうか。

次回は「プレイングマネジャーの力量」について考えてみたいと思います。

  • 小西 功二 Koji Konishi

    小西 功二サイコム・ブレインズ株式会社 ディレクター / シニアコンサルタント

    神戸大学文学部卒業、名古屋商科大学大学院MBA。中小企業診断士。
    前職では自動車メーカーのコンサルティングファームにて、系列ディーラーの経営改⾰を⽀援。販売台数の増加、利益拡大、赤字経営からの脱却、後継者育成など幅広い支援業務に携わる。2013年、サイコム・ブレイ ンズ入社。顧客企業のパフォーマンスが向上し、「社員が元気になる」様な研修プログラムの開発・提供に力を注いでおり、人や組織がよりよく変化していく事を体感できることが最大のモチベーション。大阪府堺市出身、趣味は映画鑑賞と車の運転。年に一度は10日間の一人旅に出ている。

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