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コンサルタントの眼講師は将来消えてなくなる?―人材育成のICT化と近未来について

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コラム

2017.04.24

小西 功二 Koji Konishi
小西 功二サイコム・ブレインズ株式会社 ディレクター / シニアコンサルタント

皆さまこんにちは。今回は私の連載コラムの最終回として、「人材育成の近未来」について考えてみたいと思います。

企業内教育におけるICT化の波

人材育成の近未来を考えるにあたって、近年のICT化の波を抜きに語ることはできません。

皆さんは「EdTech(エドテック)」という言葉をご存知でしょうか?これは、Education(教育)とTechnology(技術)を掛け合わせた造語で、ICTを活用した革新的な教育サービスの概念です。昨今、学校教育だけではなく企業内教育においても注目を浴びています。IoT(モノのインターネット)、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、AI(人工知能)、ビッグデータ解析といった新しい技術は、企業内教育の領域においても今後ますます研究・実用化が進むものと思われます。

EdTech先進国であるアメリカでは、例えば以下のような形で企業内教育へのICT活用が進んでいます。

① 映像教材を使って知識インプットを事前に済ませ、集合研修の効率と効果の向上を図る『フリップト・ラーニング(反転授業)』

② 仕事に必要な知識やスキルを、スマートフォンを使っていつでもどこでも短時間で習得する『モバイル・ラーニング』

③ 遠隔地をインターネットでつなぎ、仮想空間の中で集合研修を実現する『バーチャル・クラスルーム』

アメリカでは、地理的な制約(国土が広く、集合研修のコストが高い)を克服する必要性、またミレニアル世代を中心とした国民のITリテラシーの高さも要因となって、企業内教育のICT化が進み、さらなる技術の進化、学習スタイルのイノベーション…という好循環が回っているように見受けられます。

なぜICT化が必要なのか?

一方、日本の企業内教育におけるICT活用は、一部の先進的な大企業を除けば「まだまだこれから」といったところでしょうか。しかしながら、人材育成の潮流がICT化にあることは間違いありません。サイコム・ブレインズとしても企業内教育のICT化を主導すべく、4年前からオンライン配信による映像教材を活用した反転授業型の研修を提案して参りました。映像教材のラインナップは現在170タイトルを超え、継続的に新しいコンテンツを開発しています。

「アメリカのトレンドは3年遅れて日本にやってくる」という、まことしやかな都市伝説が本当であれば、今年あたりが日本の『企業内教育・ICT化元年』になりそうです。では、今なぜICT化が必要なのでしょうか? 以下の3つの観点が考えられます。

第一に、研修の費用対効果の可視化です。ICT化を進めることで、受講者のあらゆる学習行動をデータとして記録・蓄積・分析することができます。例えば「誰が、いつ、どれくらいの時間をかけ、どんな媒体を介して映像教材を視聴しているか」といったデータです。それらのデータと、学習前後のオンライン・テストやアセスメントの結果、さらには実際の仕事におけるパフォーマンスが学習の前後でどのように変化したのか、といったデータを合わせて分析することで、研修の費用対効果を可視化できます。

第二に、研修効果の最大化です。前述のように、学習行動とパフォーマンスの相関関係を明らかにすることで、「どのような教育プログラムを」「どの対象者(職種・職位・職歴)に」「どんなタイミングで」実施することが有効か(無効か)といったことが、一目瞭然になります。こうした分析結果をもとに、教育プログラムの改善を重ねることで、研修効果をより高めることができます。『今、私のパフォーマンスを上げるためには、どんな内容を、どんな方法で習得すればよいか?』をAIが判断し、完全に個人にカスタマイズされた教育プログラムが提供される…。そんなことが実現するのは、さほど遠い将来ではないのかもしれません。

第三に、研修運営の効率化です。『働き方改革』が注目を集めている中、コストをかけて各拠点にいる受講者を一か所に集めて研修をすることの是非が問われ始めるでしょう。単純に考えれば、テレビ会議システムの応用技術としてのバーチャル・クラスルームの導入が解決策として考えられます。

教育・研修の費用対効果、つまり業績への貢献がますますシビアに求められ、またそれぞれの従業員のバックグラウンドや働き方が多様化する中、従来の画一的な教育、集合研修へのアンチテーゼとしてICT活用を検討する。日本の企業内教育は、今まさにそのタイミングに来ているのだと思います。

講師は「将来消えてなくなる職業」?…今こそイノベーションを!

オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン博士が2014年に発表した『雇用の未来―コンピューター化によって仕事は失われるのか』という論文が、ひところ話題になりました。この論文では、将来AI(人工知能)に代替されてしまう可能性の高い職業・仕事がリストアップされています。

人材育成の領域において真っ先に思い浮かべるのが「講師」という職業です。この講師という仕事、将来的には消えてなくなってしまうのでしょうか? それとも生き残るのでしょうか?

サイコム・ブレインズが提供する顧客価値の一つは、良質な講師陣です。講師は「受講者の知識レベル、理解度に応じたわかりやすい説明・解説」「豊富な実務経験からくる受講者への適切なフィードバック」「受講者の議論を活性化させ、気づきを引き出すファシリテーション」といった高度なスキルを持っています。しかし、こうした人間ならではの経験・知見や高度なコミュニケーション技術でさえ、将来AIに取って代わられるとしたら…。講師はおろか、私のようなコンサルタントも、もしかしたら消えてしまうのかもしれません。

だからこそ、今まさに我々自身にもイノベーションが求められています。技術の進歩に正面から向き合い、我々が提供できる顧客価値を再定義し、さらに新たな顧客価値の創出を目指す必要があります。顧客価値を自ら問い直す過程において、講師やコンサルタントの役割は従来とは違ったものとなりながら、存続していくべきだと我々は考えています。

サイコム・ブレインズでは、昨年から『研修プラットフォーム・サービス』としてラーニング・アナリティクスの領域に着手しています。さらにモバイル・ラーニングやバーチャル・クラスルームなどを活用した研修プログラムの実用化に向けた実験を進めています。サイコム・ブレインズならではのEdTech、人材育成におけるイノベーションの成果を皆さまにお届けできるよう、これからも精進して参ります。

  • 小西 功二 Koji Konishi

    小西 功二サイコム・ブレインズ株式会社 ディレクター / シニアコンサルタント

    神戸大学文学部卒業、名古屋商科大学大学院MBA。中小企業診断士。
    前職では自動車メーカーのコンサルティングファームにて、系列ディーラーの経営改⾰を⽀援。販売台数の増加、利益拡大、赤字経営からの脱却、後継者育成など幅広い支援業務に携わる。2013年、サイコム・ブレイ ンズ入社。顧客企業のパフォーマンスが向上し、「社員が元気になる」様な研修プログラムの開発・提供に力を注いでおり、人や組織がよりよく変化していく事を体感できることが最大のモチベーション。大阪府堺市出身、趣味は映画鑑賞と車の運転。年に一度は10日間の一人旅に出ている。

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