コラム

2014.08.25

女性管理職は「他流試合」で一皮むける

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太田 由紀 Yuki Ota
太田 由紀 サイコム・ブレインズ株式会社
取締役専務執行役員

私は、サイコム・ブレインズにおいて専務取締役として人事部門を統括すると共に、主にヒューマンスキル系研修の講師を務めています。
ここ数年、私がご依頼頂く研修の中に、女性社員対象、中でも女性管理職を対象とするものが増えてきました。初めの頃は、なぜ受講者をわざわざ「女性」に限るのか、研修にわざわざ「女性」と銘打つ必要があるのか、と、女性をことさら区別することに少々抵抗がありました。しかし実際に企業の事務局様や受講者の方々とお会いし研修を実施する中で、徐々に考えが変わってきました。

自信のない女性管理職が多い

最初のきっかけは、研修でお会いする女性社員、とりわけ管理職の多くが、自分に自信を持てないことに気づいたことでした。職場で部次長クラスのポストについている方の中にさえも「自分のような者がこんなポジションについていて良いのでしょうか」という方がいました。

この自信の無さはどこに起因するのだろうか、と考えながら話を聞いてみると「自分の判断基準に自信が持てない」「部下の男性に、上司と認められていない」「日頃仕事上で迷うことを、気軽に相談できる相手がいない」などの答えが返ってきました。

これらの悩みの種自体は、男性であろうが女性であろうが多少は持っても不思議の無い内容です。しかし、研修で男性管理職の方々とお会いしていて、このような自信の無さを感じることはあまりありません。この違いは何だろうと考えたとき「マイノリティ(少数派)」というキーワードが浮かび上がりました。

孤独であるために、負のスパイラルに陥りがち

多くの職場において、女性管理職はマイノリティ(少数派)です。組織のルールや文化は、通常、マジョリティ(多数派)によって造られていくものなので、当然マイノリティである女性管理職にとっては、すぐには理解しにくく、なじみにくいものです。そういった状況下では、どうしてもマイノリティは本来持つ能力を発揮しにくくなります。したがって、自分に自信のない状況に陥りがちです。

そのうえマイノリティであると、何か悩みがあっても気軽に相談できる相手がいないため、そういった状況について「誰でもそうだよ」「その判断基準は間違っていないよ」などとアドバイスしてもらえる機会に恵まれません。もちろん、「メンター」が存在する恵まれた職場もありますが、そうでない職場がまだまだ多いようです。

自信が無く孤独であると、「怖くて、次の一歩を踏み出せない」→「やはり自分には能力が無い」→「自分には、管理職は無理」という負のスパイラルに陥ってしまいがちです。

「他流試合」で自己の課題を客観化することで、一歩踏み出す勇気が生まれる

この負のスパイラルを断ち切るのに非常に効果的なのは、「自己の課題を客観化する」ことと、私は考えます。しかも、環境は違えど同じ立場にある人たちとの切磋琢磨を通じて客観化することが、最も有効と考えます。

ここ数年、女性管理職を対象に4回シリーズの公開研修会を実施しています。ここに集う女性管理職の多くは、1回目の研修会では、自信が無く、あまり元気もなく、警戒心の塊のような表情を見せています。

ところが4回目の研修会が終わった時には、「自分の中に判断の軸が出来ました」「悩んだ時の対処法が分かったので、もう悩むことが怖くありません」「社外にたくさんの同志が出来たので、もう孤独ではありません」と、明るく自信を持ち、行動力溢れた状態になってそれぞれの職場に戻っていきます。

これが「他流試合」の効果ではないか、と私は考えています。4回の研修会では、私が講師として、受講者の課題解決に有効な思考法やフレーム・スキルを毎回レクチャー&トレーニングします。それに加え、受講者は、同じ立場の「同志」と本気で切磋琢磨し合い、時には厳しいフィードバックを出し合うことで、自己の課題を客観視し、非常に多くのものを得ることができるのです。

次回のこのコラムでは、この4回の公開研修会がどのように進み、そこで受講者にどのような変化が訪れるか、お伝えします。

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