2021年6月7日開催レポート

早稲田大学ビジネススクール 「職場における無意識の偏見」

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2021.8.23

去る2021年6月7日、早稲田大学 大学院経営管理研究科(早稲田大学ビジネススクール)で長内厚教授が講師を務める「企業人のためのダイバーシティ・マネジメント」に、昨年に引き続き、サイコム・ブレインズ専務取締役太田由紀がゲスト講師として登壇しました。当日は「職場における無意識の偏見」をテーマに、レクチャーとディスカッションを通じて理解を深めました。

「時短勤務者に大きな仕事は任せられない」「育休取得者は昇進意欲が低い」…その思い込みが、誰かの機会・意欲を損なってはいないか?

早稲田大学ビジネススクールでは、昼間は企業で働く皆さんが、平日夜間と土曜日を利用してMBA取得を目指しています。この授業の目的は、今後、組織を牽引する立場として、様々な人たちとの協働や経営戦略の観点からダイバーシティ&インクルージョンを理解することです。

冒頭、太田は「時短勤務者には大きな仕事は任せられない」「育休をとる男性は昇進意欲が低い」といった組織の中でよく挙がりがちな声を紹介しながら、学生の皆さんに「こういった組織・チームで働きたいですか?」と疑問を投げかけました。このような、人々が無意識に持つ固定観念や思考の偏りは「無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)」と呼ばれています。無意識の偏見は誰しも持っているものであり、情報判断の効率化という点においては役に立ちますが、一方で、特定の相手に対する決めつけやステレオタイプになっている場合は注意が必要です。無意識の偏見によって仕事の采配や評価などが歪められてしまうと、本人の機会や意欲が損なわれ、職場のダイバーシティは進みづらくなってしまいます。

「誰が来訪者にお茶出しするか」が、企業イメージを左右することも

次に、太田はサイコム・ブレインズが2018年に実施した「女性活躍推進における『無意識の偏見』調査」を引き合いにだしながら、「皆さんの職場でこのような無意識の偏見はありませんか?」と問いかけました。すると、「男性客へのお茶出しを、社内の女性社員にお願いした」「約200店舗ある支店のうち、女性の支店長はたった1~2名しかいない」といった例があがりました。

このような事象の裏には、「男性客に女性がお茶を出すと喜ばれるに違いない」「女性支店長は顧客に嫌がられるに違いない」といった思い込みはないでしょうか。お茶出しの例について、長内教授は「むしろ女性がお茶を出すことが会社にとってマイナスイメージにつながることもありえる」とコメントしました。ジェンダーに関する価値観が変化してきている今日では、採用面接や商談で企業を訪れる人たちは、社内の誰がお茶を持ってくるかを観察している可能性があります。訪問した時に、性別・役職関係なしに来客に対応する本人がペットボトルのお茶を持ってきてくれたとしたら、その企業にどのような印象を持つでしょうか。無駄な業務のない、風通しの良い職場という印象を持つかもしれません。

また、ある学生からは「女性への思いやり・配慮から、出張や肉体労働を免除する事もダメなのだろうか?配慮と偏見の線引きが難しい」という質問もあがりました。業務や役割の采配において無意識の偏見はないか、を考える上で大切となるのが、「女性だから」ではなく、目の前の個別の状況や相手に応じて采配することです。「この人のため」という配慮であるときも、まずは本人に意思や状況をたずねてみてはどうか。コミュニケーションの結果、実は本人は望んでいなかったり、不満を持っているということが判明するかもしれない、と太田は解説しました。

「男性は自分一人」の会議に参加する体験で生まれた「女性の発言しづらさ」への気づき

さて、組織の中の少数派に対する、無意識の偏見を緩和するためには、どのような取組を行えばよいのでしょうか。皆さんにディスカッションをしてもらうと「少数派の人たちが経験している無意識の偏見を追体験する」という案があがりました。

この案を発表した学生の方は、社内会議にまつわるご自身の体験を以下のように紹介しました。「自社では女性の人数が少なく、『会議では女性が話しやすい雰囲気を作りましょう』と言われることがある。男性の自分はいまいちピンとこず、『思うことを言えば良いじゃないか』と考えていた。しかし、実際に『男性は自分一人』という会議に参加する機会があり、その時にはじめて少数派ならではの発言のしづらさを自分事化できた」。

会議の場における女性の発言しづらさは本人の問題である、と思われがちなように、少数派の置かれる状況や視点を想像すること自体、なかなか難しいものです。太田は「多数派に最適化された社会や組織のなかで生活していると、自分とは境遇が違う人たちがいる、ということ自体にまずきづかない」と解説し、その上で、発表者の学生の方のように、少数派としての境遇を体験してみることは、無意識の偏見を解消する上で非常に有効だとコメントしました。

論理的に「本当にそうか?」と問いかけ続ける姿勢が大切

授業の最後、太田は無意識の偏見の緩和の上で重要なポイントとして、「論理的に考える」ことを強調しました。冒頭の「時短社員には大きな仕事は任せられない」のような考えに対しても、意識的に「本当にそうなのか?」「例外はないか?」と自分自身の思考や常識を疑ってみること。本人とコミュニケーションをとってみること。また、リーダーとして周囲に根気よく「本当にそうか?」を問いかける役割を担うなどの方法を提案しました。このような取組みは地道なものであるとしても、継続により社内に同調者が少しずつ増え、文化を変えていくことが可能になります。特に、此度のコロナ禍では、新人・若手社員、あるいは女性社員といった「組織の中の新参者、少数派」がこれまで以上に周囲となじめず孤立を深めてしまう、社内の情報を得られない、といった傾向が高まっています。太田は、そのような人たちと意識的に接点やコミュニケーションを増やし、勇気づけて欲しい、というメッセージで授業を締めくくりました。

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